インプラントと糖尿病の最近のブログ記事

歯間清掃習慣や歯数の維持で、2型糖尿病患者の血糖変動が良好に。

糖尿病と歯周病は密接に関係し、2型糖尿病患者に歯周病治療を行うと血糖コントロールが改善されることが明らかになっている。
サンスターらは、通院中の2型糖尿病患者を対象に、口腔衛生指標と連続した24時間の血糖変動などの血糖管理指標調査し、その関係性を分析。
その結果、歯間清掃習慣や歯数の維持が、HbA1cや空腹時血糖値といった検査値だけでなく、24時間の血糖変動の質の良さを示すTime in Rangeとも関係することが明らかになった。
Time in Rangeは、持続血糖値で測定した血糖が目標域に入った時間の割合を計算した値で、合併症の発症・進展や死亡率に関するとの報告が増えていることから、血糖変動の質を示す指標として注目が集まっている。
(Dentalism No.60 )
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歯間清掃習慣や歯数の維持で、2型糖尿病患者の血糖変動が良好になることが明らかになりました。

2023年12月 1日

hori (08:54)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

オッセオインテグレーション獲得後であっても糖尿病はインプラント治療のリスクなのか?

「オッセオインテグレーション獲得後であっても糖尿病はインプラント治療のリスクなのか?」(九州歯科大学 野代友孝先生)
オッセオインテグレーション獲得後の高血糖状態によりAGEsおよび炎症性サイトカインの発現が増加し、インプラント周囲の骨吸収が引き起こされること、骨吸収はプラークの蓄積によって悪化することが示唆されました。
(インプラント ニュース 第33号 )
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糖尿病を持病に持つインプラント患者さんは少なくありませんが、当院の患者さんではよい状態が維持されている方が多いように感じています。
これも治療前後で、劇的にプラークコントロールが改善されていることが関係しているものと考えています。

2021年3月 1日

hori (08:00)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

インプラント治療で低栄養を改善!

・義歯を含めた全歯列の最大咬合力を用いて、咬合力と栄養摂取との関連を調査した報告では、70歳群(69-71歳)の対象者を、咬合力により低位群、中位群、高位群と分けて食品群と栄養素の摂取量を比較しました。

食品群では、緑黄色野菜とその他の野菜の摂取量は、咬合力高位群が低位群に比べて有意に多く、穀類は摂取量が少ない傾向(有意差なし)というものでした。

この結果、栄養素では、ビタミンA・C・Eや食物繊維の摂取量が高位群において低位群よりも有意に多かったと報告されています。
他にも多くの報告がありますが、概ね以下のようにまとめられます。
すなわち、咀嚼力が低下すると緑黄色野菜を含む野菜類や魚介・肉などの咬みにくい食品群を避けるようなる一方で、穀物などの咬みやすい食品の摂取が増えます。
この結果、ビタミン類、食物繊維、ミネラル類やタンパク質の摂取が減少し、炭水化物の摂取が増加するというものです。
(参考文献)
Significanse of occlusal force for dietary fibre and vitamin intakes in independently living 70-year-old Japanese : from Sonic Study. Inomata C, et al. J Dent2014; 42(5):556-564.
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咬合力の低位群と高位群とを比較した結果、低位群では、ビタミン類、食物繊維、ミネラル類やタンパク質の摂取が減少し、炭水化物の摂取が増加するということが明らかになりました。
これはすなわち、咬合再構成を行う前後で、低栄養状態が改善されるために、患者さんがインプラント治療によって真の健康を手にすることが可能となるということになります。

2018年9月20日

hori (11:18)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

現在歯数と栄養素摂取の関係

・日本歯科医師会会員の現在歯数と栄養素摂取の関係
日本歯科医師会会員約2万名の健康調査の一部を、現在歯数0本の栄養素摂取量を100%としてグラフ化したところ、現在歯数が減少するにつれて、カルシウムおよびカロテン、ビタミンCの摂取が少なくなり、逆に炭水化物の摂取が多くなっている。
現在歯数が0本の歯科医師のタンパク質摂取量を100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師のタンパク質摂取量は101.8%。
現在歯数が0本の歯科医師の炭水化物摂取量を100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師の炭水化物摂取量は96.3%。
現在歯数が0本の歯科医師の歯質摂取量を100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師の脂質摂取量は104.6%。
現在歯数が0本の歯科医師のカルシウム摂取量が100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師のカルシウム摂取量は108.6%。
現在歯数が0本の歯科医師のカロテン摂取量が100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師のカロテン摂取量は119.5%。
現在歯数が0本の歯科医師のビタミンC摂取量が100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師のビタミンC摂取量は111.1%。
現在歯数が0本の歯科医師の食物繊維摂取量が100%とすると、現在歯数が25-28本の歯科医師の食物繊維摂取量は104.2%。
(参考文献)
歯の保有状況と食品群・栄養素の摂取量との関連(その1) 平成17年国民生活基礎調査とリンケージした国民・栄養調査データによる解析. 厚生労働省科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病)口腔機能に応じた保健指導と肥満抑制やメタボリックシンドローム改善との関係についての研究(研究者代表:安藤雄一)安藤雄一ほか. 平成23年度総括・分担研究報告書. 2012; (5) : 556-564.
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口腔の専門家である歯科医師でも、現在歯数が少なければ栄養バランスが偏ることを示したエビデンスです。
食品群では、歯数が減少するにつれて、牛乳・乳製品と、緑黄色野菜を含む野菜類など多くの食品群で摂取量が減る一方で、米や菓子類の摂取量が増えています。
この結果、カルシウム、カロテン、ビタミンCの摂取が少なくなり、逆に炭水化物の摂取が多くなっています。
歯科医師であっても、現在歯数が少ないことと食事や栄養の偏りには関係があることが示されているのです。

2018年9月 5日

hori (09:02)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

糖尿病患者は依然として増加傾向。

・厚生労働省の平成26年「国民・栄養調査」では、糖尿病が強く疑われる人の割合が男性で15.5%、女性で9.8%でした。
この調査の前身である「平成14年糖尿病実態調査」では、糖尿病が強く疑われる人は推定約740万人、日本人男性の12.8%、女性の6.5%でした。
平成9年の推定値は約690万人でしたから、日本の糖尿病患者数はまだ増加しつづけています。
(知って得した!歯周治療に活かせるエビデンス )
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糖尿病の患者さんは年々増加傾向にあるそうです。
糖尿病になると同じように歯周治療を行っても、正常者と同じレベルの治療効果はないと言われており、それ故に歯を失う危険性が高いということになります。
また、糖尿病患者さんのインプラント手術は、糖尿病ではない患者さんに比べて、骨結合の失敗のリスクが2倍あるともいわれています。
糖尿病になりにくい食生活習慣を続けて、歯を失いにくい体質でありたいものです。

2017年4月 1日

hori (10:05)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

歯周病治療でHbA1cはどの程度改善するのか。

・Engebretsonらによる研究では、2型糖尿病に非外科治療(SRPおよび0.12%クロルヘキシジンの応用)を行ったところ、PPDやBOPの改善は認めたものの、HbA1cは減少しなかったと報告している。
しかし、日本において中等度-重度慢性歯周炎を有する?型糖尿病患者に非外科治療を用いた研究では、高感度CRPレベルが500ng/ml以上の患者(2型糖尿病および中等度-重度慢性歯周炎)において、SRPとミノサイクリンの局所投与により3か月後に有意なHbA1cの改善を認めたと報告している。
両者の研究においては、人種、年齢、体格指数に大きな違いがあります。
米国における体格指数は34-35kgに対して、日本では22-25kgであり、重度歯周炎により上昇する高感度CRPが肥満による炎症で相殺され、差がなくなるとの報告もあります。(単位はすべて一平方メートルあたり)
体格指数が日本人に近い中国で行われた研究では、2型糖尿病患者に外科治療を含めた歯周病治療を行った群では、HbA1c、空腹時血糖、高感度CRPを含めた炎症性因子の統計学的な改善を認めたと報告しています。
以上より、メタアナリシスではHbA1cの改善を認めてはいるものの、論文数が少ないこと、症例数が十分ではないことから、歯周病や糖尿病治療を多岐にわたり比較することは困難です。
現時点で、糖尿病治療の指針のルーティンに入ってくるほどのエビデンスはないように思います。
しかし、歯周病治療によってHbA1cが改善することは事実で、歯周病治療だけで糖尿病が改善するというエビデンスはないものの、糖尿病患者は歯周病を発症しやすいことを考えて、双方からのアプローチを行うことに意義はあると思います。
(歯界展望 2017年1月号 )
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歯周病と糖尿病との関連については、改善するとするエビデンスがある一方で、改善しないというエビデンスもあるようです。
(同じようにエビデンスとはいっても、エビデンスレベルはそれぞれで異なっています。)
そのため、歯周病治療だけで糖尿病が改善するというエビデンスはないものの、歯周病治療によってHbA1cが改善することは事実で、糖尿病患者は歯周病を発症しやすいことを考えて、双方からのアプローチを行うことに意義はあるとのことでした。
他の疾患と歯周病の関連もそうですが、歯周病の治療を行うとどの程度、糖尿病の状態が改善するのか、人種により体質が異なるのであれば、日本人の場合はどの程度改善するのかを、だれの目にも分かる形で報告していただけたらと考えています。

2017年3月20日

hori (09:59)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

70歳以上の糖尿病予備軍は35%。

・糖尿病患者の歯周治療マニュアルには、随時血糖値が200ミリグラム/dL以上の場合は間欠的処置は避けるべきと明記されている。
・70歳以上の「糖尿病が強く疑われる人」と「糖尿病の可能性が否定できない人」の割合をみると、男性で「強く疑われる人」つまり予備軍が22.6%、「可能性が否定できない人」つまり予備軍が18.4%。
女性では「強く疑われる人」が11%、「可能性が否定できない人」つまり予備軍が23.8%という数値が出ている。
まさに、約35%の高齢者が糖尿病についての何らかの因子を持っていることになるのだ。
しかも、この数値は2007年のものであり、97年からの推移においても増加傾向にあるため、現在においてはさらなる割合の増加が予想されることは間違いない。
ファイナルレストレーション装着後の口腔周囲筋ケア vol.2 )
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近年糖尿病予備軍の方は増加傾向にあり、その割合は35%を超えるようです。
糖尿病の方にインプラント治療をするリスクは、麻酔が効きにくかったり、感染が生じやすく傷が治りにくいために、インプラントが失敗する可能性があることです。
けれども、軽度の糖尿病の方のインプラント治療は、当院では特に問題は生じていません。
ただ、GBR併用のインプラントや即時負荷インプラントは、リスクが高いと考えています。

2016年5月 5日

hori (14:40)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

歯周病のリスク因子

・IL-1の多型と喫煙習慣については、5年から14年のメンテナンス患者の経過を追跡した研究がある。
この研究からIL-1多型の陽性患者(陰性の2.7倍)、喫煙者(非喫煙者の2.9倍)で顕著に歯の喪失が見られ、さらにIL-1多型の陽性で喫煙者の場合はさらに歯の喪失の危険性が高かった(IL-1陰性非喫煙者の7.7倍)。
また、体重増加(BMI)については、体重増加と歯周病の発症および進行に相関関係があることが報告されつつある。
サルを用いた動物実験でもカロリー摂取を控えた実験群では、通常のサルに比べ、アタッチメントロスと出血が少ない傾向にあったという報告がある。
ヒトを対象にした研究でも、BMIが高い患者は歯周病も4倍の確率で重症化しやすいことが分かっている。
・リウマチのような慢性炎症性疾患では、CRPのレベルが高い傾向にあり、骨代謝に障害をきたしている。
結果としてリウマチ患者の51%、変形性関節炎の患者の26%に重度の歯周炎を認めるという報告もある。
・リスク因子のうち重要性が高いものとして、
〇歯周疾患の既往メンテナンスの不定期性、喫煙、糖尿病、IL-1レベルの高いもの
・重要性が不明確だが関与が疑われるものとして、
〇内臓脂肪、BMIの高いもの、食生活、栄養状態、慢性炎症性疾患、エピジェネティックス(後天的な遺伝形質の発現)
日本臨床歯周病学会学会誌 Vol.30 2012 )
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歯周病のリスク因子を列挙してみました。
リウマチのように原因がまだはっきりわかっていない病気との関連で歯周病になりやすい場合や、遺伝的な要素により歯周病になりやすい場合は確かにあることでしょう。
けれども、禁煙や、歯科医院でのメンテナンスを受診したり、BMIを下げたリスことは、各人の努力次第で歯周病のリスクを低減させることは可能かと思います。
できることから歯周病対策をしていただけたらと思います。
また、インプラント治療後にも糖尿病や喫煙はインプラント周囲炎のリスクとなりうるので、禁煙や血糖値が上がりにくい生活習慣等は引き続きしていただくこととなります。

2016年5月 1日

hori (14:24)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

HbA1cが8%以下の糖尿病患者でのインプラント治療は、何も問題なし。

・2型糖尿病患者におけるインプラント周囲溝滲出液中の炎症性サイトカインレベルと臨床パラメータの評価
〇諸言
オッセオインテグレーションを阻害する代謝異常の一つに、高血糖に特徴づけられる糖尿病がある。
糖尿病による単球、マクロファージの異常反応の結果、IL-1β、TNF-αのような炎症性サイトカインやメディエーターが過剰産生される。
これらのサイトカインの過剰産生は歯周組織やインプラント周囲組織を破壊に導く。
本研究の目的は、インプラント周囲の状態を評価するだけでなく、良好にコントロールされた2型糖尿病患者と健常者において、インプラント周囲溝滲出液と歯肉溝滲出液中のIL-βとTNF-αのレベルを比較し、評価することである。
〇材料と方法
13名のコントロール良好な2型糖尿病患者(HbA1c<8%;グループD)と7名の全身的に健康なグループ(グループC)
HbA1c、空腹時血糖値、ランダム血糖値濃度、総コレステロール値、中性脂肪、善玉コレステロール、悪玉コレステロールが2型糖尿病患者のベースライン時と治療後7か月に測定された。
プラーク指数、歯肉歯数、プロービング時の出血、クリニカルアタッチメントは1歯および1本のインプラントにつき6点法で測定した。
合計39本のインプラントを20名の被験者に埋入した。
27本はグループDの13名に、12本はグループCの7名に埋入した。
〇結果
グループDのHbA1c、空腹時血糖値、ランダム血糖値濃度は、グループCと比較してベースライン時で有意に高い値を示した。
プラーク指数、歯肉歯数、プロービング時のポケット深さ、プロービング時の出血、角化歯肉幅はグループ間でベースライン時とそれ以降においても有意差は認められなかった。
グループDにおいて、インプラント周囲のプラーク指数は歯と比較して4か月および7か月で有意に減少した。
バイオマーカー分析ではインプラント周囲溝と歯肉溝のIL-1βとTNF-αの濃度と総レベルを評価した。
グループ内の歯とインプラント周囲やグループ間でベースライン時またはそれ以降に有意差は認められなかった。
〇結論
本研究には限界はあるものの、HbA1cが8%以下の糖尿病患者でのインプラント治療に臨床上の障害はなく、重篤な合併症も生じないことが示された。
さらに、グループ内やグループ間、またインプラント周囲や歯とで、IL-1βやTNF-α濃度や量に違いはなかった。
本研究の結果は、先行研究で示されている、良好にコントロールされた2型糖尿病患者はインプラント治療が可能であるという根拠を支持するものである。
(参考文献)
Evaluation of clinical parameters and levels of proinflammatory cytokines in the crevicular fluid around dental implants with type 2 diabetes mellitus. Dogan SB, Kurtis MB, Tuter G, Serdar M, Watanabe K, Karakis S. Int J Oral Maxillofac 2015 ; 30(5) : 1119-1127.
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糖尿病はインプラント治療を行ううえで、リスクファクターであると言われています。
ただ、実際のインプラント臨床では、糖尿病の方にインプラント治療を行っても、その程度が軽度であるならば、特に何も問題はないのではなかろうかと個人的には考えていました。
そんな折、HbA1c(正常値:4.6-6.2%)が8%以下の糖尿病患者さんにおけるインプラント治療は問題がないことがエビデンスとして報告されました。
糖尿病の患者さんには朗報かもしれませんね。

2016年3月25日

hori (17:09)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

インプラント治療における糖尿病からの負の連鎖

インプラント治療における糖尿病からの負の連鎖
1.心筋梗塞、脳梗塞→術中・術後出血に注意
2.脳卒中:術前に血圧測定、術中高血圧に注意
3.低血糖:発汗、動悸、手指の震え、空腹時の手術を避ける
4.骨粗鬆症(骨強度低下)→インプラント埋入時の初期固定不良、インプラント周囲炎に注意
5.腎障害→周術期の抗菌薬を減量、鎮痛薬はアセトアミノフェン
       →慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(骨密度低下)→骨粗鬆症
6.歯周病:術前から治療後、リコール中も歯周病の問題は継続
7.易感染性→術後感染、インプラント周囲炎:GBRやサイナスリフトなどの骨造成は避ける
(本音を教えて! GPが知りたい インプラント外科Q&A67 )
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糖尿病患者さんにインプラント治療を行う場合、そうではない場合よりも術者には注意が必要となります。
例えば、術前には腎障害による骨粗鬆症の有無を確認したり、歯周病の管理をよりしっかりと行う必要があります。
また治療計画を立てる際にも、サイナスリフトよりはソケットリフトの方が無難でしょうし、GBR併用のインプラント埋入よりはGBRとインプラント埋入を別々に行う方が良いかもしれません。
ただ、抜歯即時インプラントもGBR併用のインプラント埋入の一種かと思いますが、糖尿病患者さんに対しても良好な結果が得られているので、糖尿病の程度が軽いのであれば、抜歯とインプラント埋入を別々に行う必要はないと考えています。

2015年11月30日

hori (09:28)

カテゴリ:インプラントと糖尿病

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