S.mutans菌がインプラント周囲炎に関与?!

・実は歯肉炎中のプラークと縁下のプラークというのは連携しており、歯肉炎中のプラークコントロールができないと歯肉縁中にも影響を及ぼします。
そういう意味で他の菌はチタンに結合できません。
チタンインプラントにバイオフィルムを作ることができる細菌は、おそらくS. mutansしかいないだろうと考えられます。
いずれにせよ、インプラント治療を行う歯科医院がS. mutansに対する危険性を過小評価しているのではないかと思います。
インプラントYEAR BOOK 2016 )
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これまでインプラント周囲炎あるいはインプラント周囲粘膜炎の予防・治療に対して、歯周病菌をいかに除菌するのかということに着目されてきました。
そのため、「インプラントは歯周病に似た状態になる場合はあるけれど、虫歯にはならない。」とか、
「同じ口腔内の歯に、虫歯がある場合はインプラントは影響を受けないけれど、歯周病の歯がある場合は悪影響を受ける。」などと説明する歯科医師も多いかと思います。
しかしながら今回の報告で、インプラントが存在する口腔内に虫歯があるとインプラントの予後が悪くなることが明らかになりました。
個人的には、今回問題になっている虫歯は、おそらく歯根う蝕と関連すると考えています。
また、歯根う蝕は通常の歯冠部の齲蝕と比べて、より対処が難しいとも感じています。
以下にそのように感じられる理由を列挙します。
1. 歯根う蝕の多くは上部に冠が被さっていることも多く、発見が遅れがちであること。
2. ダイレクトボンディング等のミニマムな治療を心がけようとすると、接着の面で治療が容易ではない場合があること。
3. 冠の下の歯根う蝕を除去し延命しようとすることが、その歯の寿命を逆に短くしてしまう場合があること。
・インプラント周囲炎の成り立ちが、チタンインプラントの表面にS.mutans菌が付着し、バイオフィルムを形成する。
そしてそのバイオフィルムに、歯周病菌が付着し、バイオフィルムは厚みを増し、病原性を高めていくのであれば、まずはS.mutans菌をコントロールすることが重要であると考えられます。
インプラントを守るために、プラークコントロールを徹底するのはもちろんですが、歯科医院で定期的なメンテナンスを受けるとともに、砂糖などの糖質を含む食品をなるべく食べないようにするなどの食生活習慣を今一度見直す必要がある患者さんもいることでしょう。

2016年7月10日

hori (10:06)

カテゴリ:インプラント周囲炎

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