2022年5月アーカイブ

根面う蝕の形成機序

1. 根面表層の細菌が酸を産生
2. 酸が根面/象牙質を構成する無機質部分からミネラルを放出させる(脱灰の進行)
3. 根面/象牙質の有機質(マトリックス)が露出
4. 酸が象牙質および唾液中のたんぱく質分解酵素(MMP:マトリックスメタロプロテアーゼ)を活性化
5. 根面/象牙質の有機質(マトリックス)の分解開始
(参考文献)
Takahashi N, Nyvad B. Ecological hypothesis of dentin and root caries. Caries and Root Caries Res 2016 ; 50(4)422-431.
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根面う蝕の形成機序が明らかになりました。

ソブリヌス菌とカゼイ菌の共存により、象牙細管への侵入効率アップ。

Miller(1890)は、象牙細管への細菌の侵入を初めて証明し、象牙細管内細菌叢が球菌と桿菌から構成されていることを報告しました。
その後、どのような種類の口腔細菌が象牙細管に侵入する能力を有するのかが複数の研究者によって詳細に調べられ、う蝕原因菌ミュータンス連鎖球菌など、放線菌の一種であるネスランディ菌、乳酸菌の一種であるガゼイ菌、またう蝕原因菌以外にも口腔連鎖球菌のゴルドニー菌、腸球菌の一種であるフェカリス菌が象牙細管に侵入する能力を有していることが明らかになりました。
また、興味深いことに、ミュータンス連鎖球菌群の中でも強力なう蝕原因菌であるソブリヌス菌とプロバイティクスに用いられることが多いカゼイ菌が共存した場合、これらの菌の象牙細管への侵入効率が高まることも報告されています。
(参考文献)
Nagaoka S et. al. Microbial induction of dentinal caries in human teeth in vitro. J Endod 1995 ; 21(11) : 546-551.
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ミュータンス連鎖球菌群の中でも強力なう蝕原因菌であるソブリヌス菌とプロバイティクスに用いられることが多いカゼイ菌が共存した場合、これらの菌の象牙細管への侵入効率が高まることが明らかになりました。

パスタは虫歯になりやすい?!

でんぷんのう蝕原性(虫歯の成りやすさ)を評価する場合、生の芋なのか、ふかした芋なのかなど、異なる性質のでんぷん質食品のそれぞれのう蝕厳正に注目する必要があります。
ただし、動物実験、ヒトのプラークのpH反応、エナメル質や象牙質の脱灰に関する研究から、現代人の食生活で利用される加工食品のでんぷんにう蝕原性があることは疑いの余地がないと考えられています。
また、食後にもっとも口腔内のpHが下がるパスタは、でんぷんの加工食品の中でもっともう蝕になりやすいという報告があります。
全粒粉パン   :pH6.15
コーンフレーク :pH6.10
食パン     :pH5.98
ごはん     :pH5.93
パスタ     :pH5.84
(参考文献)
Pollard MA. Potential cariogenicity of starches and fruits as assessed by the plaque-sampling method and an intraoral cariogenicity test. Caries Res 1995;29(1)68-74.
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個人的には、クリームパスタを食べた食後に、口腔内でのプラークの増殖が気になる場合があります。
パスタ単味だけではなく、パスタソースに使用される片栗粉や砂糖が合わさって、食後に口腔内のpHを下げているような気がします。
また、「白米が健康寿命を縮める (花田信弘)」という本の中で、以下のような記載があります。
参考にしてください。
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チンパンジーには虫歯も歯周病も起こらない。
原始的なチンパンジーの食生活と近代的な人間とのそれとで、どこが決定的に違うかというと、「加熱したものを食べているかどうか」です。
非加熱のデンプンはβデンプンですが、加熱するとαデンプンに変わります。
柔らかくなったαデンプンは唾液のアミラーゼ酵素で分解されやすくなりますが、それによって多糖類が二糖類の麦芽糖に分解されるために、悪玉菌のエサになってしまいます。

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