2019年3月アーカイブ

治療せずに経過観察だけしていると10年で3本歯を失う。

・治療せずに経過観察だけしているとある文献では、10年換算で3.6本の歯を失っている。
またほかの文献では、2.5本となっている。
そのため、ざっくり10年で約3本喪失する。
(参考文献)
Buckley LA, Crowley MJ. A longitudinal study of untreated periodontal disease. J Clin Periodontol 1984 ; 11 : 523-30.
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20歳の時に28本歯がそろっているとすると、10年に3本ずつの喪失スピードでは、80歳で10本しか残らないことになります。
一方、2018年の仙台市の8020達成率は、64.1%というデータと比較すると、治療せずに経過観察だけになっているケースは現代ではレアケースといえるかもしれません。

虫歯菌で脳出血リスク14.4倍!

そのS.mutansには血清学的にc型、e型、f型、k型の4種類の菌のタイプがある。
この S.mutans の血清型を調べた研究では、口腔に存在する菌株の約70-80%が、c型であり、次いで約20%がe型、f型、k型は5%にも満たない頻度でしか存在しないことが分かっている。
しかしながら、口腔内にあまり存在しないはずのe型、f型、k型が、心疾患患者の心臓弁から高頻度で検出された。
また今回着目した S.mutans のf型やk型の多くは、Cnmというコラーゲン結合タンパクを菌体表層に発現し、前述した脳血管疾患の1つである脳出血の原因因子の1つとして注目されている。
健常者を対象とした筆者らの疫学的調査ではコラーゲン結合能を有するS.mutans株が、この脳出血の前駆症状である脳内微小出血のリスクを14.4倍高めるという驚くべき事実を発見した。
またコラーゲン結合能を有するS.mutans株の保菌者の脳内微小出血の発症率は62.8%であった。
さらにこのコラーゲン結合能を有するS.mutans株が認知機能低下にも影響を与えているということも明らかにした。
これは血管性認知症に関連する深部微小出血の発症に、コラーゲン結合能を有するS.mutans株が強く関連しているためだと説明している。
また現在では、このコラーゲン結合能を有するS.mutansが脳出血や感染性心内膜炎だけでなく、腸疾患、肝疾患、腎疾患など多種の全身疾患に関与していることが分かってきている。
(参考文献)
Miyatani F, Kuriyama N, Watanabe I, Nomura R, Nakano D, Ozaki E, Koyama T, Nishigaki M, Yamamoto T, Mizuno T, Tamura A, Akazawa K, Takada A, Takeda K, Yamada K, Nakagawa M, Ihara M, Kanamura N, Friedland RP, Watanabe Y. Relationship between Cnm-positive Streptococcus mutans and cerebrak microbleeds in humans. Oral Dis 2015 ; 21(7) : 886-893.
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虫歯菌として知られるS.mutansは、血清学的に4種類の菌のタイプがあるそうです。
その中のe型、f型、k型は、口腔内にあまり存在しないのに、心疾患患者の心臓弁には高頻度で検出されたそうです。
それでは、f型やk型にはどのような特徴があるのでしょうか。
f型やk型には、菌体表層に発現したCnmというコラーゲン結合タンパクが関係しており、Cnmがあると、脳出血のリスクを14.4倍高めることが明らかになりました。

2019年3月20日

hori (08:50)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

インプラントの傾斜角度がカラー部のひずみに及ぼす影響

・インプラントの傾斜角度がカラー部のひずみに及ぼす影響
本研究はJIS2種純チタンの加工硬化材、JIS4種純チタン、Ti-6A1-4V合金を用い、それぞれ2ピース型のインプラントを製作した。
このインプラントのカラー部にひずみゲージを張り付け、角度10度、20度と30度に傾斜させ荷重を負荷し、それぞれのひずみの測定および最大曲げ荷重の測定とCTによる内部観察を行った。
その結果以下の結論が得られた。
各インプラントのそれぞれの傾斜角度での最大の曲げ荷重はG5G5が最も大きく、次いでG4G4、そしてGWGWの順であった。
インプラントカラー部のひずみは負荷する荷重とともに増加したが傾斜角度10度と20度において各インプラント間のひずみには有意差が認められなかった。
傾斜角度が30度における荷重400N以上のカラー部のひずみはGWGWがG4G4およびG5G5よりも大きい結果であった。
曲げ試験後、CTによる試験片の内部観察においてアバットメントのねじの破折はテーパー太ねじの境界部で生じており、破折していない場合はアバットメントが塑性変形し、ところどころに亀裂が観察された。
傾斜角度20度以上で植立する場合は、カラー部の強度が大きいインプラントを選択することが示唆された。
(参考文献)
岩田雅裕, 松田健男, 臼井龍一, 秋本清, 河野恭範, 植木晋, 村上智, 伊藤充雄. インプラントの傾斜角度がカラー部のひずみに及ぼす影響. 日本口腔インプラント学会誌. 2018. No.4 Vol.31 12. 64-73.
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傾斜埋入を前提とするオールオン4では、メーカーが最大40度までアバットメントを傾斜させることが可能と謳っていることを以前聞いたことがあります。
しかしながら、今回の研究報告をもとに考えると、インプラントの傾斜角度は20度以内に抑えた設計にする方が無難であると考えられます。

2019年3月15日

hori (08:58)

カテゴリ:アバットメントの強度

スクリュー固定はアバットメントスクリューの緩みと上部セラミックスの破折が有意に多い。

・スクリュー固定は、セメント固定に比べてアバットメントスクリューの緩みと上部構造セラミックスの破折が有意に高いことが報告され、その結果としてブラークの介在による歯肉の炎症と、辺縁骨吸収のリスクが高まることが示唆されている。
(参考文献)
Nissan J, Narobai D, Gross O,G helfan O, Chaushu G. Long-term output of cemented versus screw-retained implant-supported partial restorations. Int J Oral Maxillofac Implants 2011;26(5):1102-1107.
Ferreiroa A, Penarrocha-Diago M, Pradies G, Sola-Ruiz MF, Agustin-Panadero R. Cemented and screw-retained implant-supported single-tooth restorations in the molar mandibular region: A retrospective comparison study after an observation period of 1 to 4years. J Clin Exp Dent; 7(1):e 89-94.
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現在、インプラント固定様式はスクリュー固定がブームですが、スクリュー固定はアバットメントスクリューの緩みと上部セラミックスの破折がセメント固定よりも有意に高いという研究報告もあるようです。
スクリュー固定 VS セメント固定ではなく、何事も一長一短という感じがします。

2019年3月10日

hori (08:06)

カテゴリ:スクリューリテインとセメントリテイン

ガイディドサージェリーの問題点について、メーカーサイドのマニュアル記載はない。

・スリーブは長いほど、また切削骨面に近いほどサージカルドリルの安定性は増すが、歯肉縁下に設定すると術前試適が行えない。
また、後方臼歯群に長いスリーブを適応すると、開口量の制限からサージカルドリルがスリーブに挿入できないトラブルも招く。
スリーブの長さやプラットフォームとスリーブとの距離が一定に定められたシステムでは、実際に使用するインプラント長より長いインプラント長で設計を行い、スリーブと埋入部組織との干渉を避ける必要がある。
なお、このような問題点に関して、メーカーによるソフトウエアからの警告表示はなく、干渉の回避方法に関してマニュアル記載はない。
(参考文献)
Rosenfeld AL, Mecall RA. Use of prosthesis-generated computed tomographic information for diagnostic and surgical treatment planning. J Esthet Dent 1998; 10(3):132-148.
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最先端治療とされているガイディドサージェリーですが、様々な問題点がいまだ残されているようです。
これも『最新が必ずしも最善とは限らない』と言えるでしょうね。

2019年3月 5日

hori (08:47)

カテゴリ:ガイデッドサージェーリーの問題点

インプラントの再埋入が必要な時。

・インプラント撤去後は再度インプラント埋入を考えるものの、同じ術者が同じインプラントを埋入した場合、2度目の生存率は83.5%、3度目の生存率は60.0%となる。
再度インプラント埋入でインプラント生存率が下がる理由は、インプラント及び患者因子との関連はないものの、インプラント周囲組織に望ましくない因子の存在が関係してくる。
そのため、インプラントが2回失敗した場合は、ほかの治療法を検討するか、周囲の新鮮骨にインプラントを埋入することが望ましい。
(参考文献)
Machtei EE. What do we do after an implant fails? a review of treatment alternatives for failed implants. Int J Periodontics Restorative Dent. 2013 ; 33 (4) : e111-119.
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患者さんの同一部位にインプラントを再度埋入する場合は、当院でもゼロではないです。
インプラントがロストした場合には、何かしらプラスアルファの工夫をプラスして再埋入が必要となると考えています。

2019年3月 1日

hori (07:39)

カテゴリ:インプラントと全身の健康

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