インプラントと歯内療法の最近のブログ記事

根管が見落とされている確率

・根管が見落とされている確率
右上7:33.3%、6:41.3%、5:12.3%、4:5.2%
左上7:27.7%、6:46.5%、5:9.9%、4:10.3%
右下7:22.7%、6:20.1%、5:4.4%、4:18.2%
左下7:20.6%、6:18.1%、5:2.7%、4:35.3%
ということは、左下4が見落とされている根管が多いことになります。
その特徴は、2-3割が根管中央付近で分岐する2根管であることが関連し、根管が見落とされている確率が、右下4では18.2%であるのに対して、左下4では35.3%と大きな隔たりがあることから、右利きの術者であれば、レストが取りやすい右下よりも左下の方が、髄腔開拡の大きさが小さいことに起因しているものと推測されます。
(参考文献)
Karabucak B, et al.: Prevalence of Apical Periodontitis in Endodontically Treated Premolars and Molars with Untreated Canal: A Cone-bean Computed Tomography Study. JOE: 538-541, 2016.

2018年11月15日

hori (08:47)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

歯性上顎洞炎に最も関連性の高い根は?!

上顎洞と上顎臼歯根尖との距離
・上顎洞底に近い根
上顎7の近心頬側根(平均0.83ミリ)
上顎6の口蓋根(平均1.56ミリ)
上顎骨頬側壁に近い根
上顎4の近心頬側根(平均1.63ミリ)
上顎6の遠心頬側根(平均1.72ミリ)
(参考文献)
Eberhardt JA, Torabinejad M, Christiansen EL. A computed tomographic study of the distances between the maxillary sinus floor and the apices of the maxillary posterior teeth. Oral Surg Oral Med Oral Pathol 1992; 73(3) : 345-346.
・上顎洞炎症例の平均粘膜肥厚は7.4ミリであった。
上顎第一大臼歯と第二大臼歯は、小臼歯の11倍の確率で上顎洞炎との関与を認めたが、2本の大臼歯の上顎洞炎への関連性は同確率であった。
また、歯性上顎洞炎に最も関連性の高い根は上顎第一大臼歯の口蓋根であり、続いて第二大臼歯の近心頬側根であった。
(参考文献)
Rigolone M, Pasqualini D, Bianchi L, Berutti E, Bianchi SD. Vestibular surgical access to the palatine root of ruperior first molar: "low-dose cone-beam"CT analysis of the pathway and its anatomic variations. J Endod 2003; 29(11): 773-775.
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上顎骨頬側壁に近い根は、何かしらの問題が生じた際には、頬側歯槽骨を破壊してフィステルが現れる可能性が高いということになります。
また、頬側骨から根尖までの距離が小さいので、比較的無症状にフィステルが生じるかもしれません。
上顎第一大臼歯の口蓋根と第二大臼歯の近心頬側根は、頬側の歯槽骨まで距離がある一方で、上顎洞までの距離がないために、歯性上顎洞炎を惹起させやすいと考えることができます。
さらに、上顎第一大臼歯の口蓋根は、頬側の根よりも根尖孔の大きさが大きいために、バクテリアが容易に根尖孔外に出ることが可能となります。
上顎第一大臼歯の口蓋根の根管治療の際には、クラウンダウン法で、上部のバクテリアの多く存在する部位を先に除去する一方で、これ以上根尖孔の大きさを広げないように、ステップバック法も併用していくとよいと考えられます。
しかしながら、このように丁寧な根管治療を行っていても、インプラント治療が必要となるケースはあります。
上顎第一大臼歯の口蓋根からの根尖病変は、容易に歯槽骨を破壊し、その骨量を減らします。
そのため、上顎大臼歯部へのインプラントは、骨増生なしでインプラントを埋入可能なケースはそれほど多くはないというのが現実です。
条件が悪いケースでは、インプラントが上顎洞に迷入しないように、骨増生だけを先に行い、数か月後に2回目の骨増生とインプラント埋入を行うとよいでしょう。

2017年10月25日

hori (16:05)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

抜髄により歯根膜の感覚閾値が低下する。

・局所麻酔は、侵害刺激の中のほんの一部である痛覚を遮断しているにすぎず、麻酔による除痛中であっても、組織は残る多くの刺激に対してダイナミックな応答をしていることを忘れてはならない。
抜髄処置そのものが、痛み中枢の脳幹に関わり、歯根膜組織の感覚閾値を低下させることも明らかとなっており、抜髄による歯周組織の感覚閾値低下は歯根膜感覚を論じる上での定説として確立している。
すなわち、抜髄による歯髄知覚神経の求心路遮断の結果、脳幹における吻側亜核や尾側亜核の機能局在が崩壊し、刺激と応答という特異的関係がなくなり、非特異的応答性に変化することから歯根膜感覚に閾値低下を生じるのである。
(参考文献)
長谷川誠実:顎間厚径弁別能における歯根膜感覚の役割. 岐阜歯科学会誌, 14(2):252-268, 1987.
Sessle BJ, Gerhard HF : Trigeminal neuralgia : current concepts regarding pathogenesis and treatment. 1st ed, Butter-Heinmann, Boston, 1991
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咬合痛がある患者さんの根管治療を行うと、一旦は痛みは消失します。
しかしながら、根管治療後に補綴治療を行った際に、稀に再度咬合痛があると訴える患者さんがいます。
VASでいうと抜髄前が10だとすると、抜髄後は1や2程度です。
そして、どのようなタイプの患者さんがこのような訴えをしてくるかと考えてみると、咬合力がその歯に集中し、歯冠破折を起こしてきた患者さんです。
抜髄を行うと、歯の知覚自体は大幅に閾値が上昇すると考えられますが、代償的に歯根膜感覚閾値が低下し、その歯を守るために知覚の回復を身体がオートマティックに行ってくれるようです。
また他の報告では、失活歯の咬み心地は、生活歯の半分程度であることも明らかになっています。
経験的に抜髄により歯根膜感覚が代償的に感覚閾値を低下させるのではなかろうかと考えてたところなので、今回ようやくそれを正しいとするエビデンスに出会うことができました。
さらに、歯冠破折を起こしてきた歯は、全体の咬み合わせが変化しなければ、将来その部位は歯根破折を惹起する可能性が高いものと考えられます。
そのような部位にインプラント治療を行うことは、そこに歯があった頃の数年前の状態に戻るだけの治療です。
咬み合わせの治療の一つのツールとして、インプラント治療を位置づけなくてはなりません。

2017年5月25日

hori (09:57)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

下顎大臼歯近心中央根管とは?!

・ヒト下顎大臼歯の近心中央根管の発生率を、臨床的に調査。
対象はアメリカ人、75歯中、15歯(20%)に穿通可能な近心中央根管が存在した。
年齢層により有意差があったが、性、大臼歯のタイプは、有意差がなかった。
21歳以下:  32%程度
21-40歳:   24%程度
40歳以上:   4%程度
(参考文献)
Nosrat A, et al. Middle mesial cannals in mandibular molars : incidence and related factors. J Endod. 2015 ; 41 (1) : 28-32.
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これまで、大臼歯の近心根は近心頬側根管と近心舌側根管の2根が存在することが多いと考えられてきました。
そして、その2つの根管の間にはイスマスという溝が存在し、その部分には歯の病気を引き起こす細菌が存在するということが明らかになってきました。
そしてさらに今回の報告で、そのイスマスの中に根管が結構な頻度で存在することが明らかになりました。
また、この近心中央根管の出現率ですが、40歳以上では4%程度、21歳以下では32%程度ということで、統計学的有意差が認められたとのことです。
年齢によって、これほど出現頻度が異なるのは、興味深い現象です。
近年、顎が小さいにも、大きな歯が萌出してきているお子さんは少なくありません。
本来、比較的丸い形態をしていた大臼歯も、狭い顎骨の中で萌出する過程で、押しつぶされて複雑な形態になってきている可能性も考えられます。
そのように考えると、大臼歯の形態が複雑化してくると、その内部の神経の分布も複雑化してくるのではないでしょうか。
今後、近心根の3つ目の根管の存在の可能性を疑って根管治療を行う必要性は、若年者に対する根管治療の際には、特に必要になることでしょう。

2017年1月20日

hori (14:56)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

NiTiファイルの使用そのものが、治療の予後向上のためとは言い切れない。

・Dahlstromら(2011)が指摘しているように、長期にわたり使用していたとしても、不良根管充填が生じる割合や、破折のリスクはあまり変わらないようである。
NiTiファイルの欠点である"器具破折"はつねに付きまとうリスクである。
Kochら(2015)は、NiTiファイルの使用により、成功率が向上することはなかったとしている。
このことは、たとえNiTiファイルを使用しても実際に機械的形成ができる根管壁はごく限られていること、根管内からの細菌の除去に関し、ステンレススチールファイルとNiTiファイルに差がない等の報告からも、推察される。
NiTiファイルの使用そのものが根管治療の予後に与える影響は限定的だと考えるべきであろう。
NiTiファイルが非常に良い危惧であり、今後も臨床の場でさらに存在感を増していくことは間違いない。
しかし、現時点において治療の予後の向上のためとはいいきれないであろう。
(一歩進んだエンド治療のQ&A )
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個人的な感想としても、最新式のNiTiファイルがなくても従来からのステンレススチールファイルでも、根管治療の予後には影響がないように感じていました。
NiTiファイルは穿通性がステレンススチールファイルよりも低いので、根管が狭窄したケースでは、私はステンレススチールの方を重宝して使用しています。
10-15年前はNiTiファイルを嬉々として使用していましたが、突然生じる破折リスクを考えると、ステンレススチールも悪くはないのでは、と考えるようになりました。
個人的にはこれについても、"最新が必ずしも最善とは限らない"ということになるでしょう。

2017年1月15日

hori (17:22)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

10年後のMB単冠では、歯髄生存率は85%前後、ブリッジは70%。

・香港で行われた後ろ向き研究
単冠の陶材焼付冠(MB)あるいはブリッジを装着された歯の根尖部の状態をデンタルX線写真で判定した。
単冠の陶材焼付冠では歯髄の生活性は高かったが、上顎前歯のブリッジでは高頻度で失活となった。
10年後のMB単冠では、歯髄生存率は85%前後、ブリッジは70%。
(参考文献)
Cheung GS, et al. Fate of vital pulps beneath a metal-ceramic crown or a bridge retainer. Int Endod J. 2005; 38(8) : 521-530.
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上顎前歯部への陶材焼付冠あるいはオールセラミックスは、お口の中でもよく見えるところであるために、患者さんの治療希望の多い部位でもあります。
神経を除去すると歯が弱くなるという歯科医師もいるようですが、実際は失活歯は生活歯よりも乾燥しているというデータや、力学的に脆弱であるというデータは誤りのようです。
歯髄生存率は、単冠で85%、ブリッジで70%、その差は15%。
提供する根管治療のクオリティにもよりますが、個人的には、被せてから歯髄壊死が生じるくらいならば、最初から根管治療・根管充填を行い、支台歯形成時の歯髄へのダメージがない状態で被せた方が得策と考えています。
もちろん、患者さんには何か問題が生じた際のリスクを説明したうえで、数ある治療法から選択していただくのが良いということは言うまでもありません。

2017年1月10日

hori (14:50)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

直径2.26ミリ以下の根尖病変は、デンタルエックス線写真では発見困難。

・デンタルX線写真は、CBCTでの根尖病巣の大きさに対して、根尖撮影では19%と過小評価したり、108%と過大評価したりしてしまうことがある。
CBCTでは観察可能な直径2.26ミリ以下の根尖病変は、デンタルエックス線写真では発見困難であった。
(参考文献)
Lopez FU, et al. Accuracy of cone-beam computed tomography and periapical radiography in apical periodontitis diagnosis. J Endod. 2014 ; 40 (12) : 2057-2060.
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日常的に私たち歯科医師が、患者さんの歯の状態を把握するために使用しているのが、デンタルX線写真です。
パノラマX線写真と比較すると、精度はデンタルX線写真に分がありますが、CBCTと比較すると、やはりデンタルX線写真も確実ではないようです。
でもだからと言ってCBCTを気軽に撮影してしまうと、今度は被爆の問題が生じてきます。
CBCTの力を借りずに、如何にデンタルX線写真だけで患者さんの状態を確実に把握するか、というのは歯科医師としての基本的な技術でありながらも、歯科医師のレベルによって大きく異なるものと考えています。
高い技術を持つ歯科医師を目指したいものです。

2017年1月 5日

hori (10:19)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

根尖部垂直性歯根破折は、臼歯部で生じやすい。

・垂直性歯根破折がどの方向に生じてるのかを調査したところ、歯頸部破折では77歯のうち29歯が近遠心方向、43歯が頬舌方向、5歯がその他であり、いずれの歯種においても特定の方向に破折する傾向は見られなかった。
一方、根尖部破折では90歯のうち78歯と、約9割が頬舌方向に破折していた。
歯頸部破折と根尖部破折では破折方向が大きく異なっていたことは、破折のメカニズムが違うことを示唆するものである。
・根尖部破折が前歯部で少ないこと、破折方向が頬舌に多発していることから、破折のメカニズムとして次の仮説を考えている。
まず、咬合力が加わって歯が沈下すると、歯根膜が歯を歯冠側方向に引っ張る。
この際、歯根は歯冠側方向だけでなく歯槽骨に向かって外側方向にも引っぱられることになり、歯根が扁平であれば長軸方向より短軸方向に強く引っ張られる。
人の歯の断面はすべての歯種で頬舌方向に長いので、根尖部破折は頬舌方向に生じやすいものではないかと考えている。
(補綴装置及び歯の延命のための最新治療指針 )
*****
根尖部の垂直性歯根破折は、前歯よりは臼歯部で生じやすいこと。
歯根形態が扁平なものの方が、長軸方向と比較して、短軸方向により強く引っ張られれるために、根尖部の垂直性歯根破折は頬舌的に生じる傾向があること。
がわかりました。
根尖部の垂直性歯根破折と根尖性歯周炎の鑑別が特に大臼歯部では困難でしょうから、通常の歯内療法を行っても治癒する傾向がなければ、外科的歯内療法を選択するのもよいかと思います。
しかし、天然歯が一度咬合力で破折したものをMTA等で封鎖し、炎症が一旦は落ち着いても、同じ咬合力がかかるのであれば、また破折するのでないでしょうか。
そうなると、多くの歯科医師は自分が行った外科的歯内療法を行った歯を守るために、意図的に咬まない低い歯を入れることでしょう。
そして、咬み合わせの平面は歪んでいき、根尖部の垂直性歯根破折は他の歯で生じることになるのです。
歯を残すことは歯科医師の使命であるはずです。
でも、外科的歯内療法よりもインプラント治療の方が患者さんにとって適当であるというケースは少なくないように感じます。

2016年8月10日

hori (08:26)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

歯根端切除術とインプラントの位置づけは変わるのか?

・逆根管形成・充填は同条件にして、マイクロスコープを用いた場合と、肉眼・ルーペを用いた場合を比較したメタアナリシスでは、マイクロスコープで94%、肉眼・ルーペで88%と有意差を認めた。
・逆根管充填材にはさまざまな材料が使われている。
病変の縮小を基準に治療の成否を判定する方法が一般的であるが、MTAとスーパーEBAが良好な結果を出している。
とはいえ、他の材料との差は極めて小さい。
Super EBA 89%
MTA     90.8%
IRM     84.7%
ガッタパーチャ 88.5% の成功率
(参考文献)
Setzer FC, et al. Outcome of endodontic surgery : a meta-analysis of the literature-part 2 : Comparison of endodontic microsurgical techniques with and without the use of higher magnification. J Endod. 2012 ; 38(1) : 1-10.
Tsesis I, et al. Outcomes of surgical endodontic treatment performes by a modern technique : an updated meta-analysis of the literature. J Endod. 2013 ; 39 (3) : 332-339.
*****
近年、「歯をすぐに抜いてインプラントにするのはけしからん。
私たち歯科医師は歯を保存することに全力を注ぐべきだ。』という風潮が今の歯科界にはあるように感じます。
それと関連してか、術式的には昔から存在する歯根端切除術が脚光を浴びています。
また、『最先端のマイクロスコープとMTAを使用することで、歯根端切除術の成功率を大きく引き上げる』というイメージをメーカーが中心となって、定着させるように行動をしてきているようにも感じていました。
今回紹介する論文にもあるように、歯根端切除術に使用する材料による成功率の差は、考えていたより小さいこと。
さらに、有意差はあるものの肉眼・ルーペによる成功率(88%)とマイクロスコープ(94%)による成功率が、考えていたより小さいことが明らかになりました。
自由診療をベースにした欧米の歯内療法であれば、MTAとマイクロスコープを使用した歯根端切除術がスタンダードにはなるかと思いますが、保険診療をベースにした日本では、Super EBAとルーペを使用した歯根端切除術がスタンダードになるのではないでしょうか。
グラム当たりの価格がgoldと同じくらいあるいはそれ以上もするMTAや、メルセデスが買えるくらい高額なマイクロスコープを使用する歯根端切除術は、日本ではまだまだ"絵に描いた餅"のように感じてなりません。
歯根端切除術には、"3ミリルール"といって、根尖から3ミリの部分を外科的に切除します。
歯根が長い歯牙であれば、3ミリの切除は問題にならないのかもしれませんが、歯周病により辺縁からの歯槽骨レベルが低下しているような歯牙で、かつ歯根端切除術が必要なケースもあるかと思います。
そのようなケースでは、歯間-歯根比が崩れてしまい、『根の状態は健全であるけれど、しっかり咬ませるともたない。』となる可能性もでてくるでしょう。
『これだけ手間暇かけて、結局咬めないのであれば、インプラントの方が良い。』と現在とは逆の方向の風潮に変化する時代が再度くるように感じられてなりません。 

2016年7月25日

hori (08:40)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

上顎側切歯の予後不良が多い理由。

・上顎側切歯の特徴
特異形態(盲孔、舌側溝、副根、歯内歯)が出現する。
(クインテッセンス 2016年4月号 )
・舌面窩の上縁より、舌面歯頸隆線と辺縁隆線との境界部を通過する浅い溝をみることがある。
これを舌面歯頚溝(斜切痕)という。
溝が歯頚線を超えて、根面にまで達するものも存在する。
また、この舌面歯頚線の出現頻度は上顎側切歯が最も高い。
(日本人永久歯解剖学 )
・舌面窩最上端が尖頭となり、舌面歯頸隆線の下にもぐるこみ盲孔を形成する。
この盲孔はう蝕の好発部位である。
歯内歯は盲孔との関連があり、盲孔形成の異常とされている。
なお、上顎側切歯での盲孔の出現率は50%以上とされている。
(図説 歯の解剖学 )
・歯内歯とは、歯冠部の象牙質の一部が表層のエナメル質とともに歯髄腔内に深く陥入した歯の形態異常。
歯内歯は、その特殊な構造のために、齲蝕が多い。
(Wikipedia )
・人類の切歯は単根であるが、往々にして二根性の歯牙が出現することがある。
しかしながらこの二根性というのが下顎においてはほとんど等値の唇舌二根に分かれており、また上顎側切歯も大体において唇舌二根に分岐しているものの、その舌側は基底結節に相応した付加的なものが多いのである。
(九州歯科大学雑誌 上顎右側中切歯の唇側近心に副根を有する稀有なる一例 )
*****
上顎側切歯が上顎中切歯や上顎犬歯よりも予後不良が場合が多いような印象があったため、上顎側切歯の形態学的不利な側面を調べてみました。
その結果、特異形態として、盲孔、舌側溝、副根、歯内歯があることが分かりました。
上顎側切歯に盲孔があれば、歯ブラシが届きにくい形態をしているために、虫歯になりやすいでしょう。
また上顎側切歯に舌側溝があれば、その深さによりますが、その部分の歯周ポケットが深くなる傾向があるので、歯周病で歯を失うリスクは高いと言えるでしょう。
そのような意味では、上下顎の6前歯の中で歯内・歯周病変に最も罹患しやすいのは、この上顎側切歯の可能性があります。
さらに、根管治療が上手くいかないものの中には、副根の出現頻度が稀であるために、この副根の存在を歯科医師が見落としている場合もあることでしょう。
最後に歯内歯についてですが、構造が特殊故に虫歯になりやすいとされています。
上顎側切歯に関する他の文献では、親知らずに次いで退化傾向にあるとありました。
退化傾向にあるということは、萌出してこない場合も他の歯牙よりも高頻度で、円錐歯のような形態が正常な形態で萌出しない場合もあるということになります。
上顎側切歯は中切歯や犬歯よりも歯根表面積が少ない場合が多いですが、それが少ないということは、容易に歯列不正を惹起する可能性も考えられます。
上顎側切歯が形態学的にも不利なだけでなく、他の前歯よりも位置的にも歯磨きがしにくい傾向にあるということです。
具体的に説明をするならば、中切歯と犬歯にはじき出されるように、側切歯が内方に位置偏位を起こしているケースは歯磨きが容易ではないということです。
そうなると、前歯の中でも将来インプラントが必要な状態になる可能性が比較的高い側切歯を守るためにも、歯列矯正治療は有効な場合も多いかと考えられます。

2016年6月20日

hori (14:56)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

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