インプラントが必要な状態にならないために必要なことの最近のブログ記事

根尖と下顎管が交通している割合は、若い女性に多い。

・Burkleinらは、CBCTを用いて下顎臼歯根尖と下顎管の距離(両者が交通している場合)を調査したところ、それぞれ第二小臼歯では4.2?(3.2%)、第一大臼歯では4.9?(2.9%)、第二大臼歯では3.1?(15.2%)であり、第三大臼歯を除いては第二大臼歯が最も下顎管に近接していたと報告している。
特に、根尖と下顎管が交通している割合は、女性が男性の2倍で、高齢者と比較して35歳以下に多かったという。
(参考文献)
Burklein S, Grund C, Schafer E, Bowles WR : Relationship between root apices and the mandibular canal: a cone-beam computed tomographic analysis in a german poplation. J Endod, 41 (10) : 1696-1700,2015.
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この報告により、若い女性の下顎第二大臼歯に対して根管治療を行う場合は、特に下顎管との位置関係への配慮が必要であることが分かりました。

根管治療の予後判定は術後4年が目安。

・根管治療の予後判定は、一般的には術後4年が一つの観察期間の目安とされており、これを超えても治癒曲線はあまり変化しない。
従って以前の治療が4年未満に行われたもので、治療後、特に臨床症状の発現もないのであれば治癒中の病変という可能性も否定できないため、経過観察と判断してもよい。
(参考文献)
Ng YL, Mann V, Rahbaran S, Lewsey J, Gulabivala K : Outcome of primary root canal treatment: systematic review of the literature- part 1. Effects of study characteristics on probability of success. Int Endod J, 40 (12) : 921-939,2007.
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根管充填後に根尖部にエックス線透過像が存在しているからといっても、治癒過程で透過像がみられる場合もあるので、術後4年間は経過観察してもよいというエビデンスです。
思ったよりも長い印象を持ちました。

セメント質の厚みによりSRPの仕方を変えるべきか。

最近の研究によると、「細菌由来の内毒素は、歯周病罹患歯のセメント質表層に存在し、深くは浸透していないため、セメント質はできる限り除去するべきではない」と報告されています。
除去すべきセメント質表層というのは、20-30μmの厚さです。
では、良く研磨された手用キュレットを使用した場合、1回のストロークでセメント質はどれくらい厚さが削れるのでしょうか?
個人差もありますが、1回のルートプレーニングで約5-30μm削れます。
一方、セメント質は部位によって厚みが変わってきます。
歯頸部2/3は約20-50μmですが、根尖部1/3では150-200μmあります。
歯頸部に近い部分、つまり浅いポケットの部位をSRPする場合、仮に1ストロークで10μm削れると考えると、キュレットで2-5回ストロークすればセメント質はなくなってしまいます。
特に浮腫性の歯肉はSRPによる退縮が大きいため、オーバーデブライドメントにより知覚過敏が起こりやすくなります。
またポケットが浅い場合ではSRPで歯石が取れる確率は高いことなども考慮すると、過剰なSRPは不要といえるでしょう。
それに対して、根尖部1/3のセメント質は、歯頸部と比較すると比較的厚みがあります。
深いポケットでは歯石が取りにくい一方で、セメント質が厚く歯肉退縮による知覚過敏の影響を受けにくいことから、こちらはアンダーデブライドメントにならないような注意が必要です。
(デンタルハイジーン 2018年8月号 )
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歯頸部2/3と根尖部1/3でセメント質の厚みが異なるために、歯頸部2/3ではオーバーデブライドメントが、根尖部1/3ではアンダーデブライドメントが起こりやすいことが分かりました。
ただ、根尖部1/3まで骨吸収があるようなケースは、水平的骨欠損では、歯冠歯根比が不良なので抜歯も視野に入るかもしれません。
ちなみに、下顎第一大臼歯の平均的歯冠長が頬側で6.87ミリ、歯根長が13.68ミリです。
これを元に考えると、根尖部1/3まで歯槽骨吸収が進行した場合、歯冠-歯根比は15.99ミリ:4.56ミリですから、3.5:1となります。
水平的骨吸収なら、単冠で前後の歯があるなら、保存可能かもしれませんが、ブリッジの支台歯では保存は厳しいかもしれません。

やはり柔らかい湿ったう蝕象牙質には細菌が多い。

・Kiddらは、患者の永久歯のエナメル・象牙境にある齲蝕象牙質を採取し、これを培養して含まれる細菌数と採取部位の硬さ、色、湿潤状態との関連を調べました。
その結果、柔らかく湿った齲蝕象牙質に含まれる齲蝕原性細菌数は、柔らかく乾燥した齲蝕象牙質より多く、柔らかく乾燥した齲蝕象牙質の細菌数は硬く乾燥した齲蝕象牙質より多かったことを報告しています。
これらの結果から、硬い齲蝕象牙質では、柔らかい湿ったう蝕象牙質に比べて有意に細菌数が少ないと結語しています。
また、齲蝕象牙質の色に関しては、着色した硬い齲蝕象牙質の細菌数は、着色のない硬い齲蝕象牙質よりは多いが、細菌数は100CFU/ml以下と少ないこと、細菌数は、硬い齲蝕象牙質であれば着色がある場合とない場合との間に有意差がないと報告しています。
したがって、着色した硬い齲蝕象牙質には細菌がほとんどいないので、除去する必要がないといえます。
(参考文献)
Kidd EA, Ricketts DN, Beighton D. Criteria for caries removal at the enamel-dentin Junction : a clinical and microbaiological study. Br Dent J 1996 ; 180(8) : 287-291.
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硬い齲蝕象牙質では、柔らかい湿ったう蝕象牙質に比べて有意に細菌数が少ないこと。
細菌数は、硬い齲蝕象牙質であれば着色がある場合とない場合との間に有意差がないこと、が明らかになりました。
ある程度イメージしていた通りの結果ですね。
また、根面齲蝕では、齲蝕表層から歯髄に至る全域で硬さが一様に低下していることも咬合面う蝕とは異なる特徴といえるでしょう。

根面齲蝕に歯肉退縮歯数、BOP歯数、ドライマウスが有意に関連している。

・根面齲蝕経験(歯数)には、「歯肉退縮歯数」「プロービングによる出血(歯数)」「ドライマウス(主観的)」の3つの説明変数が有意に関連していました。
(参考文献)
Sugihara N, Maki Y, Okawa Y, Hosaka M, Matsukubo T, Takaesu Y. Factors associated with root surface caries in elderly. Bull Tokyo Dent Coll 2010 ; 51(1) : 23-30.
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根面齲蝕に歯肉退縮歯数、BOP歯数、ドライマウスが有意に関連していること、年齢や性別には有意差はないことが明らかになりました。

精神障害者には根面齲蝕が多い。

・精神障害者施設における20歳以上の成人70名の未処置の根面齲蝕の有病状況では、20歳代から40歳代までは、いずれの年代においても成人集団と比較して明らかに高い値を示しています。
この対象集団における口腔清掃や歯科受診の不良だけでなく、抑うつ症状および薬物治療やそれにともなうドライマウスの影響が考えられます。
(参考文献)
眞木芳吉信 . 成人および老年者における歯根面齲蝕の病因と疫学 . 日歯医歯会誌 1992;45:205-217. 
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個人的にも精神障害者の方に虫歯を放置している方が多い印象がありましたが、今回そのれを裏付けるエビデンスを見つけることができました。

中年男性の親知らず抜歯

・第三大臼歯が存在しない場合が最も第二大臼歯に対して病的状態を与える率が少なかった。
この場合の病的状態とは、齲蝕の存在、20%以上の骨喪失、4ミリ以上のポケットのうち、いずれか一つでも見いだされたことを意味する。
軟組織埋伏の場合、第三大臼歯が存在しない場合に比べて4.88倍リスクを高めた。
萌出している場合は1.74倍、骨内埋伏の場合は2.16倍リスクを高めた。
結論として彼らは、中高年の男性では、第三大臼歯を保存することが第二大臼歯の病的状態のリスクを高めることと関わりがあるとしている。
(ザ・クインテッセンス 2018年6月号 )
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中高年、特に中年男性が親知らずを抜歯して欲しいと来院する場合は、歯茎が腫れている、出血する、臭いや味が気になる等の具体的な不具合がある場合がほとんどのように感じます。
そして、中年男性は仕事に追われているのか、『時間が取れないので、抜歯だけやってほしい。』という希望の方が少なくありません。
親知らずの周囲が汚れている状態であれば、個人的には抜歯を視野に入れている場合も可能な限り清潔にした状態を先に作るべきであると考えています。

非外科的治療は単根歯でも、歯周外科治療の2倍の時間がかかる。

・非外科治療の有効性が報告されていますが、単根歯(切歯、犬歯、小臼歯)を対象にしており、複根歯や根分岐部病変に罹患した患歯を含んでいません。
単根歯に比較して、大臼歯や解剖学的リスクのある患歯の根面を確実にデブライドメントすることは現実的ではありません。
単根歯の非外科的治療であっても、術者の高い技術力が要求され、時間も歯周外科治療を行う場合に比べて2倍かかります。
根面のデブライドメントが難しい部位は、根面溝、根分岐部および適合不良な修復物の直下です。
単根歯を被験対象とした非外科的治療に反応しない、すなわち効果の上がらない部位(ハイリスク部位)のアタッチメント・ロスの進行には7つのパターンがあり、Non-Linear説を支持しています。
また「ハイリスク歯の進行パターン」が複数あることも示唆しています。
(参考文献)
・Lindhe J, et al. Healing following surgical/non-surgical treatment of periodontal disease. 1982 ; A clinical study. J Clin Periodontol. 9 : 115-128.
・Badersten A, et al Effectof nonsurgical periodontal therapy. ?.Severely advanced periodontitis. 1984 ; J Clin Periodontol. 11 : 63-76.
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歯周病治療は通常、保険診療のガイドラインに則って行うものですから、根面のデブライドメントが難しい部位に対しては、最初から歯周外科治療を視野に入れるべきだと考えています。
また単根歯といえど、非外科的治療では歯周外科治療の2倍の時間がかかるわけですから、保険診療であればこそ歯周外科治療を行うべきと考えられます。
私は若いころ一日にフラップ手術を4件こなすような日を過ごしました。
フラップ手術は歯周外科治療の基本である切開・剥離・縫合の上達に役立つので、インプラント治療の腕を向上させたい歯科医師は、まずは歯周外科治療が上手くならないといけないでしょう。

フッ化ジアミン銀に対する考え方が欧米で変化。

・フッ化ジアミン銀を齲蝕の管理に使用すると歯が黒変するので、これまで米国を中心に欧米ではフッ化ジアミン銀を使用しない状況であった。
2016年7月11日、New York Times に"A Cavity-Fighting Liquid Lets Kids Avoid Dentists ` Drills"という記事が記載され、米国ではなぜフッ化ジアミン銀を歯の治療に使用しないのか、ものすごい反響が起こった。
この記事を受けて、米国歯科医師会は、齲蝕治療のマネジメントにフッ化ジアミン銀を使用するべきだとコメントを出した。
(参考文献)
ADA(American Dental Association). Silver Diamine Fluoraide in Caries Management. Science in News. July12,2016.
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フッ化ジアミン銀は、商品名サホライドといって、歯科では古くからある齲蝕進行抑制材です。
半世紀前は、虫歯の治療に非協力な子供達の齲蝕治療に使われていましたが、現在は親御さんが自分の子どもの歯が黒変するのを嫌うようになったために、徐々に使用されなくなってきていました。
ところが昨今、人間の寿命が延びることによって、かつてはあまり問題とはならなかった根面齲蝕が問題となるようになりました。
根面齲蝕は歯冠部とは異なり、さほど大きな齲蝕ではなくても容易に神経にまで到達し、そこから破折することも少なくないので注意が必要です。
下手にCR充填を行うよりも、根面齲蝕対策にサホライドを使用する方が患者さんにとって有益かもしれません。

下顎6の電気歯髄診は、近心頬側咬頭で判断するとよい。

・20-25歳の下顎大臼歯を用いて、どの部分に電気歯髄診査の電極を当てると一番反応しやすいかを1120回行い調査した文献では、近心頬側咬頭が最も反応した。

この理由は、電気歯髄診で反応するA繊維が多く密集する髄角の部分は最小の電流で、比較的早く強い反応を示すと述べられている。
(参考文献)
Lin J, Chandler N, Purton D, Monteith B. Appropriate electrode placement site for electric pulp testing first molar teeth. J Endod 2007 ; 33(11) : 1296-1298.
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ある研究報告では、精確さがそれぞれ、冷試験:86%、温熱試験:71%、電気歯髄診:81%という結果で、どの検査方法を用いても100%歯髄内の状態を正確に診断できるわけではないと結論付けられていますが、下顎第一大臼歯の電気歯髄診では近心頬側咬頭が最少の電流で、比較的早く強い反応を示したことが明らかになっています。
下顎大臼歯の主機能部位は頬側遠心咬頭と遠心咬頭の内斜面間になることが多いことから考えると、近心頬側咬頭が少ない刺激で反応するのも納得がいくような気がします。

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