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根管治療後の矯正を開始する最適な時期は15日後。

・根管治療後に病変の治癒傾向がX線写真像などで確認できるまで矯正治療の開始を待つ必要がなく、矯正治療を速やかに開始することは可能であるが、矯正力にともなう歯周組織の炎症や疼痛、そして根管治療の術後疼痛の生じるリスクや患者負担等を考慮すると、根管治療後の最適な矯正開始時期は根尖部組織が治癒機転に入るであろう根管治療後、少なくても15日経過以降が望ましいといえるだろう。
(参考文献)
Consolaro A,Consolaro RB. Orthodontic movement of endodontically treated teeth, Dental Press J Orthod. 2013; 18(4):2-7.
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根管治療が必要な歯がある場合には、基本的には矯正治療を行う前に行っています。
(個人的に、部分矯正はアンカーとなる歯牙が移動するリスクがあるので、積極的には行っていません。)
根管治療が終了し、支台築造、仮歯を入れた後に矯正治療を開始しますが、治療を急いでも、矯正治療開始する際には根管治療終了から15日は経過しているので、ほぼ待たずに治療を進めてよいということになります。

充填不成功率は、飲酒者・喫煙男性で高い。

・研究チームは、治療後2年以内の充填不成功率は、飲酒者で高く、総合的な充填不成功率は喫煙男性で高くなることを見出した。
さらに、歯の中に認められる酵素のマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP2)の遺伝子の違いが、充填不成功の増加と関係していた。
そこで研究者らは、MMP2が充填材と歯の表面の間の接着材を分解することができ、これにより不成功に至っているのではないかと仮定した。
しかし研究者らによると、何らかの確定的な結論を得るにはさらなる調査が必要とのことだった。
(DENTAL TRIBUNE 2018 Vol.2 No.1 )
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コンポジット等の充填処置の不成功率が、飲酒者や喫煙男性で高いとのことでした。
飲酒をするとブラキシズムの程度や頻度が増大しますから、飲酒者で充填不成功率が高いのは理解できます。
一方、喫煙男性で充填不成功率が高いことについては、喫煙により歯の中の酵素のMMP2に遺伝子変異が生じているのかもしれません。
また、喫煙女性ではなく喫煙男性で充填不成功率が高いのは、喫煙量が女性よりも男性の方が多いことと関連があると推測されます。

ドップラー法は、根管治療の治癒を6週間後に判定できる。

・ドップラー法による血流測定は、上顎前歯の根管治療の治療結果の評価にも応用されている。
ドップラー法で評価すると治癒を示唆する所見が6週間後に明らかになる症例が大半であり、ドップラー法が口腔内エックス線写真に比べて治癒を早期に判定できることが例証された。
(歯内療法成功のためのコーンビームCT活用術 )
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歯内療法の治癒は、レントゲン的にはある程度の期間が経過しないと判断できないものですが、6週間で治癒を示唆する所見が得られるドップラー法は有効かもしれませんね。

2根管性の上顎切歯の頻度は、男性で有意に高い

・トルコ人の上顎中切歯、側切歯の形態をCBCTで解析した研究では、過剰根管の発現頻度を0.3-3.2%としており、さらに、2根管性の上顎犬歯が男性で3%、女性で1%に発現すること、2根管性の上顎切歯の頻度が男性で有意に高いことが述べられている。

(歯内療法成功のためのコーンビームCT活用術 )

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男性は女性よりも顎骨も大きく、歯牙の大きさも大きいことが多いために、有意差をもって男性の方が女性よりも2根管性の切歯の頻度が高いと考えられます。

また、一般に歯の大きさが大きいほど、根管の数が多いです。(切歯<小臼歯<大臼歯)

上顎犬歯は切歯の中では最大の大きさである場合が多いです。

ある程度以上の大きさがある歯牙であれば、太い神経が真ん中に一つ存在するよりも、頬側に一つ、口蓋側にもう一つ存在する方が、痛みセンサーとしての機能はうまく発揮されると考えられます。

近年、アブフラクションによる可逆性歯髄炎で来院される患者さんが少なくないので、太い神経が1つよりは細い神経が2つの方が、過大な咬合力を受けた際にも、反応する閾値が高めに設定されるのではなかろうかと推測しています。

そうして考えると、切歯の2根管性はある意味、"進化"ととらえることができます。

根尖が閉塞している根尖部透過像を認める症例でも62.5%が治癒

・Hasselgrenによると、根尖が閉塞している症例において、術前のデンタルエックス線写真で根尖部透過像を認める症例でも62.5%が治癒したと報告されている。
(参考文献)
Hasselgren G: The prognosis for endodontic treatment of obliterated root canals, J Endod, 14: 565-567, 1988.
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根尖部に大きな病変が存在する歯の根管治療を行う場合、何が何でも根尖まで穿通しなければ治癒しないと思い込んでいる人も多いと考えられます。
しかしながら、穿通させることができた場合と比べれば治療成績は下がりますが、適切な根管治療が行われれば、術前のデンタルエックス線写真で根尖部透過像を認める症例でも62.5%が治癒したと報告されています。
根管が高度に石灰化しているようなケースでも、歯内療法を行う価値はあるということになるでしょう。

義歯安定剤の効果的な除去方法

・義歯安定剤の効果的な除去方法
被験者は適合の良好な総義歯装着者20名で、1日3回クリームタイプの義歯安定剤を試用してもらい、1週間ずつ異なる方法で、義歯の清掃を行わせた。
(A)水で義歯を1日3回ブラッシングする。
(B)水とココナッツ石鹸を用いて義歯を1日3回ブラッシングする。
(C)水と歯磨剤(Colgate-Maxima Protecao Anticaries: Colgate-Palmolive)を用い、義歯を1日3回ブラッシングする。
(D)水で義歯を1日3回ブラッシングし、就寝前に5分間、過ホウ酸ナトリウム溶液に浸漬する。
の4通りである。
1週間後、染料を用いて上顎の義歯床粘膜面に残留している義歯安定剤を定量した。
同時に患者の唾液を採取し、カンジタ種を同定し、CFU(コロニー形成単位)を算出した。
その結果、水でブラッシングする(A)の方法に比べて、(B?D)の方法では有意に義歯安定剤の残留量は減少し、特に機械的清掃と化学的清掃を併用した(D)の方法で効果が高い傾向であった。
(参考文献)
Crossover clinical trial of different methods of removing a denture adhesive and influence on th oral microbiota. J Pros Dent 2016.115.
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義歯に歯磨剤を併用し、ブラッシングを行うと、歯磨剤の中の研磨剤によって、義歯には傷がつきやすくなるリスクがあります。
義歯に傷ができるとブラッシングで取り除けない義歯安定剤が生じやすいために、歯磨剤の薬効成分による効果と相殺された可能性があります。
また特に、Dの機械的清掃と化学的清掃を併用した方法で義歯安定剤の残留量が最も高い効果が認められたのも、バイオフィルムを除去したうえで、歯磨剤を併用したプラークコントロールを行う方法が効果的であることとイメージは近いように感じました。

歯石が形成速度は個人差が大きい。

・歯石が形成される速度は人によってかなり異なります。
2週間ほどでほぼ成熟する人もいれば、数か月から数年かかって形成される場合もあります。
これらの個体差がなぜ起こるかは不明ですが、唾液や歯肉溝滲出液中の無機質の成分やpHが影響すると考えられます。
そのほか、クロルヘキシジンによる洗口の副作用の一つに歯石形成の増加があります。
プラーク形成を抑制するクロルヘキシジンの使用で歯石形成が起こるというのは矛盾した現象のように思えますが、クロルヘキシジンンの陽イオンが、本来ならカルシウムイオンと結合する口腔内の物質と結合するためカルシウムの析出が起こり、それで歯石が形成されるという説明がされています。
(デンタルハイジーン 2018年1月号 )
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プラーク形成を抑制する事を目的にクロルヘキジンを使用するのに、その副作用に歯石形成がなされるというのは、何とも興味深い現象ですね。

プラークが付着しやすい人と、しにくい人は何が違う?

・プラークが付着しやすい人と、しにくい人は何が違う?
実験的歯肉炎モデルにおいても、歯肉炎の発症が遅い人ではプラーク形成速度も遅いことが観察されています。
したがって、プラーク形成速度は歯肉炎の発症速度に影響すると考えられます。
それではプラーク形成速度の違いはどうして起こるのでしょうか。
Zeeらの研究では、11名の中国人を対象に実験的歯肉炎モデルを用いて、プラーク形成速度が速かった5名と遅かった6名のプラーク中の細菌を比較したところ、形成速度が速い被験者ではグラム陰性桿菌の割合が高いことが観察されました。
また、Simonssonらの同様の研究では、プラーク形成量が多い人は少ない人と比べて、ペリクル中のグルタミン酸の量が多く、疎水性相互作用がプラーク形成にかかわっている可能性を示唆しています。
また、歯と歯肉の境界部の面積が大きいとプラークが溜まりやすく、解剖学的な要素も影響すると考えられます。
さらに、歯肉に炎症があると健康な場合と比較してプラークが付着しやすいという研究結果も報告されています。
その理由として、炎症が強いと歯肉溝滲出液中のタンパクがプラーク細菌の栄養源となることや、炎症により歯肉溝部の面積が拡大しプラークが維持されやすくなることが考えられます。
(参考文献)
・Zee KY, Samaranayake LP, Attstrom R: Predominant cultivable supragingival plaque in Chinese "rapid" and "slow" plaque formers. J Clin Periodontol, 23(11): 1025-1031., 1996.
・Simonsson T, Ronstrom A, Rundegren J, et al. : Rate of plaque formation-some clinical and biochemical characteristics of "heavy" and "light" plaque formers. Scand J Dent Res, 95(2): 97-103,1987.
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プラークが付着しやすい人は、グラム陰性桿菌の割合が高いこと、ペリクル中のグルタミン酸の量が多いこと、歯列不正があること、元々歯肉に炎症があることなどの特徴があることが分かりました。
最初の2つの特徴については、それを変える方法は有りません。
一方、3番目と4番目の特徴については、歯列矯正を行い、歯根をパラレルにすることで、プラークが停滞しやすい部位をなくすすとともに、歯周病の治療を並行して行うことで、プラークが付着しやすい体質を改善することができると考えられます。

基本治療において、Er:YAGレーザーと超音波スケーラーは、どちらが有効か?

・基本治療において、Er:YAGレーザーと超音波スケーラーは、どちらが有効か?
中等度慢性歯周炎患者27名を対象に、ランダム化比較試験が行われました。
全身疾患、妊婦、12か月以内に歯周治療を受けて6か月以内に抗菌薬を服用した患者、および喫煙者は除外された。
研究はスプリットマウスデザインにて行われ、27人の患者の54クアドラント(1/4顎)、648歯面が対象とされ、右側と左側に同数振り分けられました。
1クワドラントにはEr:YAGレーザー、他の1クワドラントには超音波スケーラーが用いられました。
超音波スケーラーにはGuilin Woodpecker Medical Instrument社のピエゾタイプのものが用いられました。
そして、Er:YAGレーザーはFotona社のもが、波長2490nm、エネルギーレベル160mJ/pulsen、周波数10Hzにて使用されました。
さらに、すべての患者に口腔衛生指導が行われました。
PPD、CAL、BOPが治療前、6週後、12週後に測定されました。
また、VASによる患者自身による痛みについてのアンケートが行われました。
その結果、平均PPD、CAL、BOPは、レーザー群と超音波スケーラー群を比較して、統計学的有意差はありませんでした。
VASについては、超音波スケーラー群では平均2.67±0.46、レーザー群では平均3.58±0.50で、統計学的有意差は見られませんでした。
(参考文献)
Comparison of Er:YAG Laser and Ultrasonic Scaler in the Treatment of Moderate Chronic Periodotitis: A Randomized Clinical Traial . Birang et al. Journal of Lasers in Medical Sciences.
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この論文の筆者らは、Er:YAGレーザーは、歯周基本治療において、超音波スケーラーと同等の効果があるから、Er:YAGレーザーは歯周治療を行うのに適切な器具として使用できると結論づけていますが、私個人としては、わざわざ高額なEr:YAGレーザーを買わなくても、安価な超音波スケーラーで十分なのではなかろうかと考えています。

薬で治す歯周病治療は、臨床的意義があるのか?

・日本では、数年前にジスロマック(アジスロマイシン)を内服する歯周内科療法が流行った。
「歯周病は細菌感染症」なのだから、抗菌薬で治療しようとする発想は極めて"まっとう"だ。
海外に目を向けてみると、かなり前から抗菌薬で歯周病を治そうという試みがなされている。
様々な抗菌薬が試されてきた結果、アモキシシリンとメトロニダゾールの併用療法の成績がよろしいということになっている(海外ではなぜかアジスロマイシンはマイナーな扱いです)。
それでは、データがたくさんあって、ある程度の結果も出ているその併用療法でどのくらい歯周組織検査のデータが改善するかというと、プロービング値の改善、付着の獲得ともにだいたい平均0.6ミリ程度である。
これは統計学的有意差のあるデータである。
ここであなたに尋ねる。
「あなたの患者さんが0.6ミリ改善して、良かったと思いますか?」。
エビデンスが大切とは分かっていても、「統計学的有意差がある」ことと「臨床的意義がある」ことはイコールではないことが結構あるので、困ってしまう。
・日本では、肺炎球菌やマイコプラズマに対するマクロライドの耐性率は80%を超えている(ちなみにジスロマックはマクロライドです)。
20%を超えると治療の第一選択から外されるということを考えると異常事態である。
これを受けて"エライ"大学教授なんかは、テレビニュースのインタビューで「さらなる抗菌薬の開発が待たれる」なんて呑気なことを言っていた。
WHOでも、1990年ごろからまったく新しい抗菌薬の発見がなく、これからもずっと"発見の空白"が続くことが予想されており、今後は手持ちの抗菌薬をどのように使うかに焦点を当てるべきであると指摘している。
(歯科衛生士 2018年1月号 )
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ジスロマックを使用した歯周病治療では、歯周組織検査のデータが0.6ミリ程度の改善であること。
抗菌薬を服用すればするほど、耐性菌が増えてしまうこと。
これらを考えると、薬で治す歯周病治療は個人的には推奨できません。
厚生労働省が公開している日本人における死亡原因の年次推移のグラフでは、肺炎は脳血管疾患を抜いて3位になりました。
肺炎で亡くなる方が多いのも、日本人の「薬を飲むと安心する」国民性と関係があるのかもしれません。

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