2017年1月アーカイブ

電子タバコが安全というわけではない。

・アメリカ・ロチェスター大学のIrfan Rahman教授らの研究グループが、「電子タバコは、紙巻きタバコに比べて健康被害が少ないと考えられているが、口腔疾患については同等の有害性がある」と警告している。
電子タバコは歯周疾患の原因とされるニコチンが通常のタバコより少ないものの、蒸気が歯周組織の細胞に有害で、特にメンソール味の蒸気は有害性が大きいという。
Rahman氏は「電子タバコの蒸気にさらされていると、口腔の細胞の53%が3日間で死滅する」と指摘。
電子タバコが安全という誤解を解こうとしている。
(アポロニア21 2016年 1月号 )
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紙巻きタバコを電子タバコに替える人が増えています。
従来のタバコよりは健康被害は少ないようですが、電子タバコが安全というわけではないようです。
インプラント周囲炎や歯周病も喫煙とは関係がありますから、最低でもタバコを減らす努力はしていただきたいものです。

2017年1月30日

hori (08:38)

カテゴリ:インプラントと喫煙

インプラント周囲上皮は、健康な歯の周囲歯肉より約3倍破壊が生じやすい?!

・インプラント周囲上皮の防御能を知るために上皮細胞の交代(ターンオーバー)の速さを調べる方法がある。
細胞交代と関連する細胞の増殖率をインプラント周囲上皮と正常付着上皮とを比較するものである。
具体的には、増殖細胞核抗原を用いた免疫組織化学的検索でそれぞれの陽性率を約13%であったのに対し、正常付着上皮(厳密には付着上皮と歯肉溝上皮)では約36%であった。
このことは、インプラント周囲上皮細胞の増殖率は正常付着上皮の約1/3であり、上皮細胞の交代(ターンオーバー)が約3倍遅いことを現している。
細胞交代が遅いことはインプラント周囲上皮の防御機能が正常付着上皮のそれよりも劣っていると考えられ、臨床的には、インプラント患者のコントロールをより厳密に行う必要があることを示唆している。
(参考文献)
井上孝, 下野正基. インプラントと周囲組織. In : 下野正基, 飯島国好(編). 治癒の病理 臨床編 第4巻インプラント. 東京 : 医歯薬出版, 1996 ; 242-260. 
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健康な歯周組織ではターンオーバーが速いので細胞の抗体がスムースに起こる。
したがって、たとえプラークの攻撃によって歯肉上皮細胞が損傷を受けても十分な細胞補充があるので、健康状態を維持できる。
一方、上皮のターンオーバーが遅いと損傷を受けた細胞の交代となる細胞を補充できないので、歯周局所では歯周ポケットの形成が起こる、とのことです。
そして、具体的にはインプラント周囲細胞のターンオーバーは、正常付着上皮の約1/3程度のようです。
プラークコントロールの不良等の原因で、一度歯を失った人に対して、インプラント治療を行うということは、患者さんサイドも治療者サイドも、それ相当の覚悟をもって、インプラントのメンテナンスを続けていかなくてはならないということになります。

2017年1月25日

hori (08:46)

カテゴリ:インプラント周囲炎

下顎大臼歯近心中央根管とは?!

・ヒト下顎大臼歯の近心中央根管の発生率を、臨床的に調査。
対象はアメリカ人、75歯中、15歯(20%)に穿通可能な近心中央根管が存在した。
年齢層により有意差があったが、性、大臼歯のタイプは、有意差がなかった。
21歳以下:  32%程度
21-40歳:   24%程度
40歳以上:   4%程度
(参考文献)
Nosrat A, et al. Middle mesial cannals in mandibular molars : incidence and related factors. J Endod. 2015 ; 41 (1) : 28-32.
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これまで、大臼歯の近心根は近心頬側根管と近心舌側根管の2根が存在することが多いと考えられてきました。
そして、その2つの根管の間にはイスマスという溝が存在し、その部分には歯の病気を引き起こす細菌が存在するということが明らかになってきました。
そしてさらに今回の報告で、そのイスマスの中に根管が結構な頻度で存在することが明らかになりました。
また、この近心中央根管の出現率ですが、40歳以上では4%程度、21歳以下では32%程度ということで、統計学的有意差が認められたとのことです。
年齢によって、これほど出現頻度が異なるのは、興味深い現象です。
近年、顎が小さいにも、大きな歯が萌出してきているお子さんは少なくありません。
本来、比較的丸い形態をしていた大臼歯も、狭い顎骨の中で萌出する過程で、押しつぶされて複雑な形態になってきている可能性も考えられます。
そのように考えると、大臼歯の形態が複雑化してくると、その内部の神経の分布も複雑化してくるのではないでしょうか。
今後、近心根の3つ目の根管の存在の可能性を疑って根管治療を行う必要性は、若年者に対する根管治療の際には、特に必要になることでしょう。

2017年1月20日

hori (14:56)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

NiTiファイルの使用そのものが、治療の予後向上のためとは言い切れない。

・Dahlstromら(2011)が指摘しているように、長期にわたり使用していたとしても、不良根管充填が生じる割合や、破折のリスクはあまり変わらないようである。
NiTiファイルの欠点である"器具破折"はつねに付きまとうリスクである。
Kochら(2015)は、NiTiファイルの使用により、成功率が向上することはなかったとしている。
このことは、たとえNiTiファイルを使用しても実際に機械的形成ができる根管壁はごく限られていること、根管内からの細菌の除去に関し、ステンレススチールファイルとNiTiファイルに差がない等の報告からも、推察される。
NiTiファイルの使用そのものが根管治療の予後に与える影響は限定的だと考えるべきであろう。
NiTiファイルが非常に良い危惧であり、今後も臨床の場でさらに存在感を増していくことは間違いない。
しかし、現時点において治療の予後の向上のためとはいいきれないであろう。
(一歩進んだエンド治療のQ&A )
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個人的な感想としても、最新式のNiTiファイルがなくても従来からのステンレススチールファイルでも、根管治療の予後には影響がないように感じていました。
NiTiファイルは穿通性がステレンススチールファイルよりも低いので、根管が狭窄したケースでは、私はステンレススチールの方を重宝して使用しています。
10-15年前はNiTiファイルを嬉々として使用していましたが、突然生じる破折リスクを考えると、ステンレススチールも悪くはないのでは、と考えるようになりました。
個人的にはこれについても、"最新が必ずしも最善とは限らない"ということになるでしょう。

2017年1月15日

hori (17:22)

カテゴリ:インプラントと歯内療法

10年後のMB単冠では、歯髄生存率は85%前後、ブリッジは70%。

・香港で行われた後ろ向き研究
単冠の陶材焼付冠(MB)あるいはブリッジを装着された歯の根尖部の状態をデンタルX線写真で判定した。
単冠の陶材焼付冠では歯髄の生活性は高かったが、上顎前歯のブリッジでは高頻度で失活となった。
10年後のMB単冠では、歯髄生存率は85%前後、ブリッジは70%。
(参考文献)
Cheung GS, et al. Fate of vital pulps beneath a metal-ceramic crown or a bridge retainer. Int Endod J. 2005; 38(8) : 521-530.
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上顎前歯部への陶材焼付冠あるいはオールセラミックスは、お口の中でもよく見えるところであるために、患者さんの治療希望の多い部位でもあります。
神経を除去すると歯が弱くなるという歯科医師もいるようですが、実際は失活歯は生活歯よりも乾燥しているというデータや、力学的に脆弱であるというデータは誤りのようです。
歯髄生存率は、単冠で85%、ブリッジで70%、その差は15%。
提供する根管治療のクオリティにもよりますが、個人的には、被せてから歯髄壊死が生じるくらいならば、最初から根管治療・根管充填を行い、支台歯形成時の歯髄へのダメージがない状態で被せた方が得策と考えています。
もちろん、患者さんには何か問題が生じた際のリスクを説明したうえで、数ある治療法から選択していただくのが良いということは言うまでもありません。

2017年1月10日

hori (14:50)

カテゴリ:インプラントとブリッジ

直径2.26ミリ以下の根尖病変は、デンタルエックス線写真では発見困難。

・デンタルX線写真は、CBCTでの根尖病巣の大きさに対して、根尖撮影では19%と過小評価したり、108%と過大評価したりしてしまうことがある。
CBCTでは観察可能な直径2.26ミリ以下の根尖病変は、デンタルエックス線写真では発見困難であった。
(参考文献)
Lopez FU, et al. Accuracy of cone-beam computed tomography and periapical radiography in apical periodontitis diagnosis. J Endod. 2014 ; 40 (12) : 2057-2060.
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日常的に私たち歯科医師が、患者さんの歯の状態を把握するために使用しているのが、デンタルX線写真です。
パノラマX線写真と比較すると、精度はデンタルX線写真に分がありますが、CBCTと比較すると、やはりデンタルX線写真も確実ではないようです。
でもだからと言ってCBCTを気軽に撮影してしまうと、今度は被爆の問題が生じてきます。
CBCTの力を借りずに、如何にデンタルX線写真だけで患者さんの状態を確実に把握するか、というのは歯科医師としての基本的な技術でありながらも、歯科医師のレベルによって大きく異なるものと考えています。
高い技術を持つ歯科医師を目指したいものです。

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