2013年10月アーカイブ

インプラントは天然歯よりも感染防御の点で不利。

Hultinら(2000)は、部分欠損症とインプラントが埋入された後、10年間の追跡調査を行い、天然歯とインプラント、それぞれの周囲からプラークを採取し、細菌叢を比較しました。

結果は、インプラント周囲にはP.gingivalisやP.intermedia、T.forsythiaといった天然歯周囲のプラークと同種の歯周病菌がみつかっただけでなく、驚くべきことに、それらの細菌がインプラント周囲のプラーク中に占める比率は天然歯周囲のプラークと比較して有意に高かった。

やはりインプラントは天然歯よりも感染防御の点で不利であることが示唆されたといえるでしょう。

以上のことから、部分欠損歯列にインプラントを埋入する場合は、歯周病菌が天然歯から周囲のバイオフィルムからインプラント周囲に伝播することが考えられ、特に歯周病のコントロールがなされていない場合にはそのリスクは高く、いわゆる「インプラント周囲炎」に至る可能性が高いと考えられます。

(参考文献)
Hultin M, Gustafsson A, Kling BJ : Long-term evaluation of osseointegrated dental implants in the treatment of partly edentulous patients. Clin Periodontol 27 (2) : 128-133,2000.

2013年10月20日

hori (14:58)

カテゴリ:インプラントについて

根面齲蝕の好発部位

根面齲蝕(虫歯)の好発部位

Ravaldら(1986)が、根面齲蝕の発生部位に関して大変興味深い報告をしています。

重度の慢性歯周炎に罹患し、外科的もしくは非外科的な歯周治療を受けた患者群の術後8年間の予後を観察したところ、歯周病のコントロールは良くなされていたものの、齲蝕の問題が生じていました。

齲蝕が発生した部位を調べたところ、上顎犬歯および大臼歯部に根面齲蝕が好発し、特に頬側面および遠心面により多く発生していました。

また、根面齲蝕の好発部位を調べたところ、約50%は修復物の辺縁に発生しており、以下、セメント-エナメル境(CEJ、25%)、歯肉辺縁(7%)という順でした。

このRavaldらの研究では、被験者のPlIは8年間でほぼ20%と良好であったにもかかわらず、約3/4の患者さんに根面齲蝕が発生しています。

このことは、患者さんがプラークコントロールに注意を払っていたとしても、根面齲蝕の完全な抑制は難しいことを示しています。

(参考文献)
Ravald N, Hamp SE, Birkhed D : Long-term evaluation of root surface caries in periodontally treated patients. J Clin Periodontol 13 (8) : 758-767,1986.

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インプラントの治療計画を立案する際、相対的に状態の良い歯牙を保存し、その前後にインプラントを埋入するケースは少なくありません。

しかしながら、インプラントとインプラントに挟まれた歯牙は、今回紹介した根面齲蝕、歯根破折、歯周病など様々な理由で保存不可能となり、抜歯に至ることもまた現実には珍しいことではありません。

患者さんが将来にわたり、追加のインプラント治療が必要にならないような治療計画を立案することを"是"とすると、インプラントとインプラントの間に挟まれた歯牙は、よほど条件が良くなければ抜歯した方が良いということになります。

その方の将来の未来予測をすることができる歯科医師は、一本でも歯を残したい患者さまから、自らが"是"とする治療計画に対する同意を得ることが困難な場合もあります。

私は、インプラント相談に来られる方が、可能な限り納得されるように、文献やあらゆる説明ツールを用意し、歯科医師と患者様が同じ目線で、それぞれの治療計画のメリット・デメリットを把握できるようにしたいと考えております。


両者が、十分に納得したうえで、治療計画を立案する必要性があるということになります。

2013年10月10日

hori (06:43)

カテゴリ:インプラントについて

歯周病患者の根面齲蝕リスクが高い理由

歯周病患者の根面齲蝕リスクが高い理由

1)プラークが堆積しやすい複雑な形態を有している歯根が露出している。

2)エナメル質はその約70%がハイドロキシアパタイトで構成されているのに対して、象牙質は約70%であるため、象牙質が露出した根面はエナメル質より脱灰しやすい。

つまり齲蝕を発症しやすいといえます。

In vitroの研究では、永久歯エナメル質の脱灰臨界pHが5.5-5.7であるのに対して、象牙質では約5.7-6.2とされ、象牙質の耐酸性はエナメル質のわずか1/5であるといわれています。

口腔内にはエナメル質には問題を起こさない程度の弱い酸を産生する細菌(lactobacillusなど)が多いのですが、それらの細菌も露出した根面にとっては大きな脅威となることがわかります。

3)唾液分泌量の低下

4)身体機能の衰えによるプラークコントロールの悪化

5)歯の喪失に伴う炭水化物中心とした柔らかい食物の摂取頻度の増加

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中高年の患者様のお口を拝見していると、歯冠はきれいな状態なのに、露出した歯根部から虫歯が発生しているケースが頻繁に見受けられます。

いくら歯冠の状態が良くても、虫歯を除去していくと、ほとんど歯が残らないということも少なくありません。

そのような状態になると、いわゆるフェルールがないために、長期に安定したクラウンやブリッジ治療を行うことはできません。

そうなると、治療プランは、インプラントあるいは義歯となります。

『若いころと比べると、歯が長くなってきた。』という認識がある方は、ご自分の歯を少しでも長く使用できるように、今回ご紹介した、"歯周病患者に根面齲蝕が発生しやすい理由"を理解されておくとよいでしょう。

2013年10月 1日

hori (12:05)

カテゴリ:インプラントについて

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