ハイブリットデザインのインプラント

・これ以上インテグレーションのスピードを追求する必要はないでしょう。
次世代のインプラントとして、私が期待するのは、"守り"のコンセプトを持っていて、既存の製品と同じ性能であるようなものです。
実際にインプラントの上部まで粗面だと、インプラント周囲炎の治療をした際、ラフサーフェス部からバイオフィルムを含む付着物がなかなか取れないです。
今は超音波器具を始めとしていろいろなツールもありますが、それらをつかってもやはり難しい。
それでも取る努力をする。
ガーゼでゴシゴシこする。
これで間違いなく綺麗になっただろうと思ってマイクロスコープで拡大してのぞいてみると、結構汚れが残っているんですよね。
・インプラント周囲炎では、歯周病より治りにくいことが分かっていますので、歯周病以上にデコンタミネーションを適切に、より高いレベルで達成できないといけません。
それが可能な表面性状がより良いと考えています。
その考えからすると、ハイブリットデザインが現状では理想に近いのかなと。
ハイブリットデザインのインプラントを用いた場合は、インプラント周囲炎の早期発見が責務になります。
早期に発見できて、3スレッドくらいまで機械研磨表面なので非常に清掃がしやすい。
となると、骨吸収を止めるチャンスが1回増えるわけです。
これはメリットが大きいと思います。
もしすべてが粗面だと、一感染したら、そこから吸収は止められずにインプラントの喪失につながってしまうかもしれません。
ですから、インプラントには「骨吸収を起こしにくい」という要素も大事ですが、「骨吸収を起こしても、インプラント周囲炎に罹患しても対処しやすい」という基準で開発されたインプラントがあってもよいと思います。
(インプラントYEAR BOOK 2015 )
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インプラントの表面性状は、時代とともに表面がつるつるした機械研磨から粗面へと変化してきました。
表面性状を粗面にすることではいくつかのメリットがあります。
一つは、ショートインプラントを使用することで、以前であれば大掛かりな骨造成をしなければインプラント治療自体が不可能であったケースでも治療可能となったことです。
二つ目は、骨結合までの時間が短縮されたために、治療期間を大幅に短縮することも可能となりました。
しかしながら、機械研磨インプラントの時代にはあまり話題にならなかったインプラント周囲炎が近年問題となってきました。
ある意味、当然の結果ともいえます。
例えば、オールオンフォーのように、インプラント手術をした日にすぐに咬める歯が入るような治療方法では、少しでも早くインプラントが骨結合して欲しいので、"特別な"粗面でなければならないのだろうと思います。
インプラントメーカー同士や歯科医院同士の過当競争により、"少しでも早く咬めるようになる"が、半ば合言葉のような状態になっていたようにも感じます。
言わば行き過ぎたスピード志向が、インプラント周囲炎の程度を重篤なものにしたのかもしれません。
(現に、オールオンフォーで使用される旧ノーベルバイオケアのインプラントのタイユナイトという表面性状は、他のインプラントの表面性状よりもインプラント周囲炎になりやすいという報告があります。)
現代の日本人は世界的にみても長寿の傾向にあります。
『少しくらい早く咬めるようになること』よりも、『長期に亘って安定した状態を維持しやすいインプラントの形態や表面性状はどのようなものなのか』を歯科医師やインプラントメーカーは十分に考えていかなければならないことでしょう。
そういう視点に立つと、今回紹介したハイブリットデザインのインプラントというのも面白いのではないでしょうか。

2015年7月20日

hori (15:22)

カテゴリ:インプラントについて

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