昨今、インプラント治療で骨火傷がクローズドアップされつつある理由

・インプラントの埋入早期の併発症の一つとして、埋入窩を形成する際の摩擦熱による骨火傷が挙げられる。
骨火傷は時として骨壊死を引き起こし、オッセオインテグレーションに悪影響を及ぼすことが知られている。
しかしながら、原因はこのトラブルを実際に経験している術者は少なく、原因や予防策の検証が十分になされていなかった。
インプラントの表面性状が深化し、より短いものが使用されるようになってきたことがその理由だろう。
可及的に長いインプラントが推奨されていたマシーンドサーフェスの時代には、埋入窩とドリルへの注水不足による骨火傷が生じやすかったのである。
ところが、昨今この骨火傷がクローズドアップされつつある。
それは、ガイデッドサージェーリーの普及が一つの要因と考えられる。
ガイデッドサージェーリーに用いるサージカルガイドは、従来の外科用ステントと比較して、歯や粘膜あるいは顎骨を広範囲に被覆する上に、ドリリングはパッシブに適合するドリルホールを通して行われる。
そのため外部注水の場合、冷却水が十分に埋入窩形成部に行き渡らず、その結果として骨火傷を引き起こすことが多くなると言われている。
(クインテッセンス・デンタル・インプラントロジー 2016年 VOL.23 4 )
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一見、最先端治療にみえるガイデッドサージェーリーも、正確なインプラントホールを形成しようとすればするほど、骨火傷のリスクは増大します。
骨火傷が生じるとインプラントの骨結合を妨げるので、インプラントの再埋入が必要となります。
ガイデッドサージェーリーを推奨するメーカーは、『短時間で埋入手術を終えることができるので、術者も患者の両方にメリットがある。』と謳っていますが、残念ながら骨火傷のリスクは増大しています。
また、患者さんの多くは、『インプラント手術は可能ならば、1回で終わらせてほしい。』と考えています。
ガイデッドサージェーリーは、手術時間は短いけれど、再手術のリスクはどうしても増大する傾向にあります。
そのような意味で、ガイデッドサージェーリーは、今後本当にインプラント治療のスタンダードになるのか、個人的にはその結果を見届けたいと考えています。

2016年10月 1日

hori (15:09)

カテゴリ:ガイデッドサージェーリーの問題点

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