薬で治す歯周病治療は、臨床的意義があるのか?

・日本では、数年前にジスロマック(アジスロマイシン)を内服する歯周内科療法が流行った。
「歯周病は細菌感染症」なのだから、抗菌薬で治療しようとする発想は極めて"まっとう"だ。
海外に目を向けてみると、かなり前から抗菌薬で歯周病を治そうという試みがなされている。
様々な抗菌薬が試されてきた結果、アモキシシリンとメトロニダゾールの併用療法の成績がよろしいということになっている(海外ではなぜかアジスロマイシンはマイナーな扱いです)。
それでは、データがたくさんあって、ある程度の結果も出ているその併用療法でどのくらい歯周組織検査のデータが改善するかというと、プロービング値の改善、付着の獲得ともにだいたい平均0.6ミリ程度である。
これは統計学的有意差のあるデータである。
ここであなたに尋ねる。
「あなたの患者さんが0.6ミリ改善して、良かったと思いますか?」。
エビデンスが大切とは分かっていても、「統計学的有意差がある」ことと「臨床的意義がある」ことはイコールではないことが結構あるので、困ってしまう。
・日本では、肺炎球菌やマイコプラズマに対するマクロライドの耐性率は80%を超えている(ちなみにジスロマックはマクロライドです)。
20%を超えると治療の第一選択から外されるということを考えると異常事態である。
これを受けて"エライ"大学教授なんかは、テレビニュースのインタビューで「さらなる抗菌薬の開発が待たれる」なんて呑気なことを言っていた。
WHOでも、1990年ごろからまったく新しい抗菌薬の発見がなく、これからもずっと"発見の空白"が続くことが予想されており、今後は手持ちの抗菌薬をどのように使うかに焦点を当てるべきであると指摘している。
(歯科衛生士 2018年1月号 )
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ジスロマックを使用した歯周病治療では、歯周組織検査のデータが0.6ミリ程度の改善であること。
抗菌薬を服用すればするほど、耐性菌が増えてしまうこと。
これらを考えると、薬で治す歯周病治療は個人的には推奨できません。
厚生労働省が公開している日本人における死亡原因の年次推移のグラフでは、肺炎は脳血管疾患を抜いて3位になりました。
肺炎で亡くなる方が多いのも、日本人の「薬を飲むと安心する」国民性と関係があるのかもしれません。

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