日本人の上顎中切歯はシャベル型切歯。

・一般にアジア人、特に中国人や日本人は、欧米人に比べて歯は大きく、根が短い。
このことは昔、名著といわれる岩波新書の「歯の話」を書いた東京大学教授・藤田恒太郎が次のように欠いている。
「日本人の歯はずんぐり型であり、白人の歯はやせ形で長い。」
・上顎中切歯の舌側面にみられる深い舌側面窩は、日本人や中国人をはじめとする東北アジア人の人々の特徴である。
東南アジアの人々では窪みの程度がもう少し弱く、ヨーロッパ人などではもっと程度が低くなり、くぼみが全くない人もたくさんいる。
(日本歯科医師会雑誌 2012年11月号 )
・生体がコーカソイドの白人とモンゴロイドの日本人では咬合の形態も機能も異なる。
咬合器に日本人の上下顎模型を付着すると、下顎が白人のそれよりも前傾で相当後退します。
咬合学は、欧米の歯科矯正顎に起源があると言われている。
アルファベットを使ういわゆる白人は、たとえばthatのような「th」を発音する際には、下顎を前方に移動させ、上下顎中切歯が対抗する位置で舌尖を軽く挟み、下顎を後退させながら「θ」発音をしますので、その発音をする際には予め発音しやすくするために、下顎を前方へ移動させています。
そのために、会話ができるようになった古代からグループファンクション咬合が多く、その骨格形態になったといわれています。
したがって、調節性咬合器に白人患者の上下顎模型を付着すると、下顎が上顎のほぼ垂直下方に位置付けられますが、そのような歯音を使わず、発音に関わる下顎位が必要ではない日本人の上下顎模型は、一般的に被蓋が強く、下顎が前傾し後退して不安定な状態で付着されます。
このようなことは白人の無歯顎補綴治療でもいえ、「f」や「v」発音では、上顎中切歯切縁が下唇の接合千に接触することから、上顎前歯の位置の決定に応用されています。
(咬み合わせの科学 vol.36 no.1・2 )
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日本人の上顎中切歯の舌側面にみられる深い舌側面窩が深いということは、辺縁隆線の発達が顕著であるということになります。
そのような状態で、下顎切歯唇面と上顎の辺縁隆線の距離が近接することになるので、結果として、オーバージェットが大きくなります。
またそれと同時に生じるのが、辺縁隆線の発達がほとんどないヨーロッパ人よりも顎位が後方に移動しやすいことです。
これにより、日本人では肥満傾向にない方でも睡眠時無呼吸症候群の方が少なくないことと関係しているように感じます。
そしてさらに、前歯部の咬み方が不足しているために、被蓋が深い方向に変化しやすいのかもしれません。
インプラント相談に来られる方を診ていると、前歯部のアンテリアカップリングがあっても、前歯部が機能できない状態にあるために、ミューチュアリープロテクティドオクルージョンにならない方が少なくありません。
『日本人の上下顎模型は、被蓋が強く、下顎が前傾し後退して不安定な状態で付着されることが多い』ことも、前歯部の舌側面窩が深いことと関係があると推測しています。

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